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シリコンバレー 第235号


シリコンバレーという地名は、その地域にシリコン(半導体の主材料であるケイ素)が採れ、半導体製造会社が多かったことや土地自体が谷のような形状だったことからシリコンバレー呼ばれるようになったそうです。 今も半導体企業もありますが、それよりもむしろSNS企業や基本ソフト開発企業が軒を連ねているのが現在の姿です。 本コラムに書いてみたいと思ったのは、仕事柄どうしても常々気になっている地域であり、また、世界のIT産業のメッカでもあり、常に世界をリードする新しいITビジネスや新しい価値観の発信地という重要な地域だからです。 今や世界の多くの人々がシリコンバレー発の商材を使用していると言っても過言ではありません。実は私も一度だけ行ったことがあり、20年以上前のことで知人達を誘って自分達でツアーを作り総勢10名程で出掛けました。何が何なのかよく分からないまま、あちこち案内されて時間が過ぎてしまったという感覚でしたが、少ない人数で普通のツアーでは行けない企業訪問もありましたし、時間も割とルーズで手作りといった感覚がとても新鮮でした。 狭い島国からやって来た日本人の我々には、ただただ広くて羨ましいなあとか凄いなあとか、あっこの会社知っているよといった感覚でとてもいい手作りツアーでした。

種明かししますと、通訳もホテルや航空機の手配も全て知り合いに頼んでやり遂げました。グレイハウンドの大型バスも知り合いに確保して貰い格安で一日中、たったの10名程で貸し切ってしまいました。結構、信じれられない安さでした・・・持つべき者は友達だと本当に感じたものです・・・本当に安くて贅沢で良かったツアーでした。参加者は皆さん、とても喜んでいました。自分達で国際ツアーを組んで実現したのは後にも先にもこのツアーだけです。 自分達だけでと言っても正確には留学生斡旋企業の知人に日本からアメリカ本土までのチケット手配やホテル予約と引率は頼み、アメリカに住んでいる知人(マック鈴木さん。野球選手ではありません。総合商社勤務)に休みを取って貰って、私達の現地訪問先の予約や通訳を頼み、本当の手作りツアーでした・・・イレギラーな出来事があっても何とかなるさと考えていました。

それよりも生まれて初めての手作りパック旅行のような気分で、とても楽しく面白かったです。 時間は自由だし少しの変更も出来ますし、本当に大型バスに総勢12,3人だけの貸し切りでした。どこの席に座っても良い訳で子供のようにはしゃいでいました・・・ また、このバスの運転手さんが現地で小さなツアー会社をやっている韓国人の社長さんでマックさんの知り合い方でした・・・まず、普通ならあり得ないツアーです。 本当に大胆な計画を実現出来て良かったあ!

シリコンバレーにはサンフランシスコから日帰りでした。 サンフランシスコで泊まったホテル名が「カリフォルニア」という名前で、当時、大流行したイーグルスのホテル・カリフォルニアを今でも思い出します。 ちょっと安めのホテルでその歌とピッタリな感じです。 さて、シリコンバレーへ向かうハイウェイ沿いにオラクル本社が見えて来て、皆が大いに喜びました。何とディスクの形をしていたビルでした・・・ インテル記念館(本社内)、ネットスケープ社、そしてスタンフォード大学へと行きました。スタンフォード大学はかなりの田舎のようなところにあり、勉強以外には何も出来ないような環境でした。 広い芝生のキャンパス、礼拝堂、タワー、学生向けの売店にも行きました・・・ いろいろ売っていました・・・ 本を読みながら、歩いている大学生を始めて観たのもこの大学でした・・・ 優秀な大学とは聞いていましたが、本当にそんなインテリの印象を受けました。 確かフーバー大統領もここの出身とか聞きました・・・ 近年ではアップルCEOの故スティーブ・ジョブスがここの卒業式に招かれ有名なスピーチをしました。

有名な「STAY HUNGRY、STAY FOOLISH!」です。 ジョブスのオリジナルではないようですが、彼にぴったりの言葉だと思います。 このスピーチでジョブスは3つの話をしています。 特に、最初の自分の生い立ちや両親の話はここの学生の心にも響いたことと思います。 ジョブス自身、入学した大学は早々に中退していますし、自分の生い立ちに大きな負い目を持っていたと思うからです。自伝の中にもその苦しみや苦悩が描かれています。一度、読まれることをお勧めします。 このスタンフォード大学の卒業式のスピーチのyou-tubeを紹介していますので聞いてみて下さい。 冒頭ではジョブスを称える当時の学長のジョン・ヘネシー氏の話から始まります。 ちなみにヘネシー氏は現在、グーグル社の親会社であるアルファベッ社の会長に就任しています。

スタンフォード大学以外に強く印象に残ったのは、当時、設立3、4年目のネットスケープ社です。 とてもそんな社歴の浅い企業に思えないほど敷地が広くて、建物もいろいろあり、とても綺麗で驚きました・・・ 日本では絶対にあり得ない光景でした。 気楽に会社見学の積りでいた私達は、いきなり会議室に通され、各自の机の上に資料が置かれ、会社案内やレジメに書かれた資料を見た時にとても驚きました!・・・ 当社名が書かれてあった上、レジメにビジネス・ディスカッションと書かれてあったからです。 我々はお上りさんのように気楽に会社訪問を考えていたのですが、流石にビジネス大国です。冷汗が出て来たのを憶えています。 日本から来た私達は目を互いにやり、どうしようか?と焦ってしまいました・・・

気軽な気分だった私達は逃げてしまいたい気持ちになりました。 どんな話をこの場に出せばいいのか、英語もろくに話せないのに、説明役の話など、どこかに飛んでしまいました。 「どうしよう、どうしよう・・・」

先方の説明役は若くて大学を卒業した位なのに堂々とプレゼンテーションしているのです。 アメリカではこんな若い女性に自社の説明やビジネスディスカッションもさせるんだ、凄いなあ!!と驚きました。 日本人の感覚とは次元が異なる仕事に対しての集中力や能力には凄いなあ!と感嘆しました。当然、説明が終わればディスカッションになります。 黙っていては私達大人の日本人達は何しに来たのかと思われるので、私は何としても質問しようと考えていました・・・ それで、後のことなどどうでもなれと思い、勇気を奮って下手な英語で質問しました。 「御社の製品は競合他社と比べてどんなアドバンテージがありますか?」とか、「今後のビジネス成長の計画はどんなことを考えていますか?」とか・・・ 私はこんな時、どうにでもなれと、そんな気持ちになります。 大阪でイスラエル企業の商談会があった際にも、セミナーがあって居並ぶイスラエル企業幹部に対し、日本人からの質問が通訳を介して幾つかありましたが、相手は英語が母国語でもないのに英語で自社を紹介をしているのです。 私は恥を掻いても構わないと思い、思い切って英語で質問しました。 下手でもいいと私は思います。日本人の英語下手は有名な話です。 今更、隠す必要もないと思います。 だったら、下手でも喋ればいいのです。 それくらいの気迫がなくては英語で話など出来はしません。 日本人はやはり英語なんて話せないし、分かってもいないと思われるのは心外です。 恥ずかしいだけの日本人であってはいけないと思います。 考える事より実行することが何に対しても大事なことだと思います。 結局、この商談会を通じてその会社とはその会社の商材を取り扱うことになりました!

しかし、イスラエル人は思った以上にビジネス面で厳しい人達でした。

私の故郷である鹿児島では幕末の薩英戦争後、イギリスの近代兵器を使った強さに敬服し、逆にイギリス側は薩摩の予想外の近代化と強さに対して幕府よりも薩摩と付き合った方が

メリットがあると考えました。

後年、薩摩は幕府に黙ってイギリスへ若い10代の藩士を留学生として10名余り送りこんで勉強した故事があり、その中の一人が大阪経済界で活躍した五代友厚でした。 そんな訳で大阪商工会議所の初代会頭は五代友厚です。大阪証券取引所前にも大きな銅像が

立っています。 今でも鹿児島市磯地区には当時、イギリスから招いた技師の宿舎だった異人館がそのまま残されています。 私もその薩摩出身で、大きく言えばDNAもあるのでしょう、恥を搔いたり失敗することは決して恥ずかしいことではないと考えています。 まあ、どうにでもなれ!といった気持ちでしょうか?・・・ 大事なことは考えることよりも行動するでこと。 何しにここまで来たか?と自問する訳です。

さて、シリコンバレーは今も半導体企業がありますが、むしろ今はSNS企業やソフトウェア産業が目覚ましく発展しています。 聞いたことのあるIT関連企業が軒並み本社を構えています。 GOOGLE、ORACLE、APPLE、FACEBOOK、ADOBE、CISCOSYSTEMS、HP、INTEL、SUNMICROSYSTEMS、YAHOOなどです。変ったところでは電気自動車のTESLAもあります。 アメリカの若いIT産業が若いエンジニアや起業家によって次々に起業し発展しています。 そればかりか、M&Aも盛んで、無名のIT企業が高額で買収されたりしますが企業の新陳代謝も盛んなのです。 ワークステーションのSUNという会社もシリコンバレーの中心地域にある、スタンフォード大学の卒業生仲間が創ったのでSTANFORD UNIVERSITY NETWORKの頭文字からSUNと命名したという話です。 余談ですが、コンピュータ専門学校のHALもIBMの一歩先を行くという意味で一文字先の名前だそうです。面白いですね・・・

このシリコンバレーでは毎日、どこでどんなことが日常に行われているのか、非常に興味が尽きません・・・ ソーシャルネットワークで使われるソフトウェアはこの地域から世界へ出ていると言っても過言ではありません。 新型コロナウィルスで世界中で感染者や死者が出ている中、在宅ワーク、Webビジネス、Ubereats、Netflics、Zoom、Teams、Adobe、・・・こういった社会に躍進する企業が沢山出てきます。 Uberーeatsも元々はアメリカでUberーTaxi(日本でいう白タク)が源のようで、結構な正規のタクシー運転手が職を失ったようです。 日本では法律で白タクは禁じられていますのでこんなことは実現不可能です。 韓国でもGreenというスマホで自分で探して乗り捨て自由なレンタカーがありましたが、本当に信じられなくて便利だなと感じました・・・ これもそれも全てスマホやアプリケーションの力です。 現金など使わなくていい社会になって行くと思います。 さて、何故、アメリカからこんなにも沢山のSNS企業やソフトウェア企業が輩出されて来るのでしょうか? 私は以前からその源は「多様性」に尽きると考えています。 そこに投資家や国籍を超えた才能が集まり、新しい試みが許される自己責任型の社会環境があり、前例に拘らない行政や立法が控えているからどんどんチャレンジが出来るのだろうと思います。 一方、日本は教育も行政も立法も企業もまだまだ保守的で先行事例型判断社会のように思います。過日、IOC委員が女性蔑視の失言をしてその役務を降りましたが、これなどはまだまだ後進国だと露呈したようなものです。 日本が名実ともに先進諸国に並ぶにはGDPとか、ODAとか、技術力とか、安全安心とか、そんな言葉の前に自らが改善していかねばならない点を見直し改革していく必要があります。


最後に、今回はシリコンバレーを取り上げて話しましたが、帰りはアメリカ西北部のシアトルに行き、地方都市ながら大きくて良い街だと思います。

ここにも過去に2回行きましたが、何度でも行きたい街です。 スターバックス発祥地ですし、AMAZON、MICROSOFT、BOEINGもあります。 何でこんな端の街がと思います。 とても過ごしやすい興味深い街だと思います。 どうしても日本人は自ら斬新で世の中にないものを自ら考え出す能力に劣っています。 平等で均質なものを作る、改善する、精度を上げるのは得意なのですが、そこには見本がないと日本人の才能を活かすことが出来ないように感じます。 もっと自由で、もっと異なる価値観を認め、もっと異なる発想を育む、四季や自然と同じように多様性が民族にあって良いと私は思います。 そういえば、あのイチロー選手も個性的で独自性があり、ホームランは少なくても、アメリカで偉大な選手として認知されたのはアメリカだったからです。 アメリカ行かず日本にずっと居たら、果たしてあそこまでのイチローが成長していたか疑わしいと思います。潰されていたかも知れません。 アメリカという、多様性があって独自の価値を認める社会があってこそ、イチローは認められたと思います。 こう考えるといつかまた、本場の野球もアメリカで観てみたいものです。

今回の話は国土も広いけれど、考え方も価値観もいろいろあって、それで自国を愛する国民が何かあれば一つにまとまるアメリカの大きさについてでした。

正に、Boys, be ambitious ! の国だと思います。


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