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儲からない商い 第203号

自分でも気づかなかったのですが、このコラムも今月号で201号目となりました。 大した内容でもないのに、実に16年以上、毎月、毎月、こつこつと書き続けて来ました。 先月のテーマがGETNTLE ON MY MINDというカントリーソングで、私が生涯のファンだったGLEN CAMPBELLの大ヒット曲だったことも、あながち何かの因縁なのかも知れません。

今月のテーマも、意味することがよく分からないテーマだろうと思います。 このテーマは普通の経営者なら、たまにはそのように思ったり、口にしているかも知れません。 私は最近、この年齢になって初めて、この意味について考える実体験をしました・・・ それは、「世の中に儲からない商売などない。儲からないのは儲からないことをしているから儲からないのだ」という話をされていた「経営の神様」こと、松下幸之助氏の言葉です。

この言葉は以前から憶えてはいたのですが、心底、実感できるような経験がなかったので、頭では分かるのですが今日までは知識として頭の中に詰まっていただけでした。 それが、恥ずかしいことですが、経営的に苦しい事があり、対策を必死に考え、急いで実行に移して、その窮地を脱することが出来ました。 その時、この言葉を思い出したのです。 「その通りだな・・・」と思い当たりました。

しかし、対策を考える時にはいろいろな角度から見直す必要があります。 通りいっぺんの思考では、なかなか適切な対策は講じられません。 問題や課題を見る際に、正面からだけでなく、後ろから、上から、下から、右横から、左横からと眺めて考えないと良いアイデアはなかなか生まれません。 このプロセスは結構重要だと思います。 というのは、対策は苦渋の策でもあるからです。 簡単に対策が生まれるなら大した苦労はありません。

例えば、ゴールは一つでも、そこへ辿り着く方法はいろいろあるのです。 これが視野であり、幅広い知識や見聞や学びがないと、そう簡単には身につきはしません。 ここがトップはトップたる由縁だろうと思います。 トップと二番手の違いです。 トップは考え生み出す地力や裁量も必要なのです。

この教えの意味することは、当たり前のことを当たり前に実行し続けなければ、商売は儲からないということです。 これが結構単純でありながら、なかなか出来ないのです。 それは自らに何らかの見栄や虚栄心や格好付け、或いは日頃から考えることを習慣づけていないからです。 体験することが一番の学びなのでしょうが、実際にその時は、お先真っ暗、どうしよう、どうしようで、月日の経つ中で右往左往でした・・・ そのままだとⅩデー(駄目になる日のこと)は必ずやって来ます。 どうにかして必ず食い止めなければなりません。 松下幸之助さんは経営の神様です。どうすれば儲かるか、どうすれば駄目になるかを世間や経験から学んだと思います。 その経験には成功もあれば、失敗もあったと思います。

他にも、「雨が降れば傘を差す」という言葉も印象深く残っています。 これも、雨が降れば人は自然と傘を差すことを、経営へ対する比喩した言葉です。 ある意味で、当たり前のことを周知徹底してやり続けるということと同義なのです。 これもなかなか普通の私には実感として理解できないのです。 頭で分かっているだけで経験がないことは、実戦では使えないということです。 調子に乗って痛い目に遭って、反省して、また同じことを繰り返すことが私には起こります。 徹することすら簡単ではないのです。

では何故、今回は体験として理解出来たと言いますと、その分苦しんだからだと思います。 本当にその時は大変でした・・・ 痛い目に遭っていながら、対策を講じても会社の状況はすぐに良くはなりません。 対策を考えて、策を講じ、結果が出るまで3ケ月かかりました・・・ その間も業績は回復しませんでした。 当社のような小さな会社でも3ヶ月かかりました。 今回はその対策に端を発して、働き方改革と銘打って、これから数年かけて社内改革を行っていきます。

さて、儲からない商いですが、儲からないことをやっていたからに他なりません。 松下幸之助氏の言葉に沿って、儲からない点を探しました。 自社のどこが悪いのか、計数資料を注意深く観察し、調べてみると、普段、気にしていなかった数字が見つかり 始めました。 正に、当社は丼勘定の経営をしていたのです。 しかも、そのことが永年に渡って行われており、調子の良かった時もあったので利益に隠れて、細かい数字を見落としていたのです。 もう今となっては元へ戻れません。 今までどれだけ損をしていたかと考えると、腹が立つやら、情けないやら、何だったんだ・・・と怒りにも似た気持ちすら起こりました・・・

そうして内に効果が現れ始め、徐々に数字が改善し始めましたのです。 しかし、当面の対策を講じても、効果は限定的にしか起こりません。 そこで、他のあらゆることも考え始めました。 そうすると、次々にあれもやらなくては、これもしなくてはといろいろな事に気づき始めました。 それらを整理し、これらをやり遂げようと決めました。 全てをやり遂げるには10年はかかりますが、やらなければならないと強く決意しています。 それは将来の為にも必要なことだからです。

時代は止まってはいません。 世の中の価値観も変わりますし、技術も顧客ニーズも社会も変わります。 いつまでも同じ事業が求められてはいません。 強い会社とは大きな会社や有名な会社ではありません。

皆さんはこんな話をご存知ですか? それは今、シリコンバレーで起業する人達には今や中国の人が多いことを・・・ 一方、日本人は留学生数も減少しましたし、今は中国や韓国の留学生より少ないのです。 海外へ出て学ぼうとする若者やわざわざ海外に行かなくても情報は国内にあると考えて」いる人達が多いからでしょうか・・・ 日本は世界の中でも1,2位を争うような少子高齢化社会へ突き進んでいます。 例えば、2017年生まれの方の半分が107歳まで生きる見込みだそうです。 また、2050年には日本人半分近くが100歳まで生きるそうです。 支える世代はどんどん減って、支えられる世代はどんどん増えるのです・・・

そうすると、おそらく、間違いなく、70歳や75歳まで働くことになることを。 だから、働き方も変わるし、移民だって受け入れることになるかも知れない。 考えないで、行動しないで、自然のままに任せておいたら、日本の国力は必ず衰退します。 過去の遺産で楽に生きて行ける時代は終わったのです。

若い人達がどんどん起業し、新しい活力を生み出さないと、未来の希望が減少して行きます。 私はもっと若い人達に起業して欲しいのです。 楽な生き方が徐々に出来なくなるからです。 こじんまりとか、そこそこなどと言わずに、決まりきったスーツを着なくてもいいから、自ら何かを立ち上げて欲しい。

私は時間もかけて、これから未来へ続く社内改革を始めます。 そこまでやる気持ちでいます。 新しい会社にするのです。 会社のリニュ-アルです。

松下幸之助氏はこんなことも言っています。 「事業はちゃんと儲かるようになっている」と。 だから、「儲からないのは、儲からないことをやっているからだ」と・・・ この意味が、この年になって少し分かって来たような気がしています。

儲けるコツが分かっている名経営者は、赤字会社をM&Aしても、2、3年で黒字へ転換します。 日本電産の永守重信氏などその典型だと思います。 結局、難しい色々な数値をあれこれ調べて比較することではなく、何か根本的なポイントがあると思っています。 先人達の築いた足元には遠く届きませんが、千分の一、万分の一を身につけられるようにと切望しながらこれからも頑張ります。

変わることは良いことであり、変わらないことがこれからはリスクではないでしょうか?・・・

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