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多様性の享受 第187号

過日、日本経済新聞朝刊裏面の「私の履歴書」にルノー・日産の最高経営責任者だったカルロス・ゴーン氏の 自叙伝が掲載されていました。 ゴーン氏は経営危機に陥っていた日産自動車を立て直したばかりか、リーマンショックのような大きなうねりに も対応出来るほどの強靭な企業へと作り上げたことは有名です。 そのゴーン氏が、「多様性を受け入れる」という多国籍にまたがった企業の経営方針とその話に触れられてい て、私も大いに賛同し、改めてこれからの当社の行き先を考える指針の再確認にもなりました。

当社は小さな社員数60名弱のICT企業です。 そんな企業が多様性など関係あるのかと思われるでしょうが、大手だからという概念はもう古いと私は思ってい ます。 小さな企業こそ、海外へ早く進出し、市場を拓き、多様性を受け入れ(私はそれを享受といいます)て、新たな価 値を創り上げる必要が、特に、日本の中小企業には必要だと考えます。

日本は島国で、永い間、海外との交流や取引も限定され、侵略された歴史もなく、農耕民族として永く存在して 来ました。 農耕民族は、畑や田んぼを耕し、作物を育てる為に集団で汗水を流し、去年より今年は収穫が増えるように 品種改良や生産性向上に努力して来ました。 時々は、自然災害から痛い目に遭わされながらも、逆らえない自然を相手に同化した生活を送るようになりまし た。 そして逆に、その自然を生活の中に取り入れる文化や生活習慣は他国にはなかなか見られない日本独自のも のです。 ここが日本人の知恵なのだと感じ入っています。

しかしながら、集団でルールを定め、そのに従っていれば安全であり、外敵に襲われる可能性も少なく、ぐっすり と安心して眠ることすら出来ました。 ルールを破れば村八分という掟が待っている訳です。 このルールこそ、目に見えない、形のない、常識という言葉で表現され、広く日本人の国民性に根付いて来た正 体です。形がないので上手に表現して外国人には分からせることが難しいものとなっています。 この均質的なルールこそが逆に、日本人を多様性から遠ざけている正体なのではないでしょうか?・・・・

一方、西洋諸国の人達は元々、狩猟民族です。 彼らは牛や家畜などを食しますが、昔はそんな動物を追いかけてあちこち移動していました。 当然のこととして、何百人もの人々で獲物を追うことはありません。 移動はごく限られた家族や何らかのグループだったと思います。 夜は火を絶やさず、見張りを立て、交代で休んでいました。 危険な時はすぐに飛び起きて戦ったり、逃げたりした筈です。 ですから、農耕民族の日本人と狩猟民族の西洋人とは考え方や行動力がまるで違います。

分かりやすい話が、西洋人はわが身はわが身で守るのが原則ですが、日本人は悪いことをした人が悪いという 概念です。 ただでさえ、こうも違うのですから、ビジネスになれば、いろいろな局面でその違いに気づくと共に対応に苦慮することになります。 しかしながら、西洋人と東洋人だけでなく、世界にはもっと多くの人達がいます。 この人達もそれぞれ価値観や習慣やビジネスが違う訳ですから、国境を越えたビジネスは大変です。 当社でも中国や台湾や韓国、或いはベトナム、イスラエルと取引きをやっていますが、各国特有の違いがあります。 しかし、それが当たり前なんだと私は思います。

海外へ行って、ビジネスをして、初めて日本とその国の違いも実感します。 今まで住んでいた日本の良い点、気付かなかった良くない点などが分かって来ます。 日本の常識は必ずしも、世界の常識ではなく、逆に違和感がある点も多いです。 例えば、日本人の集団的行動などもその一例です。 国際的なセミナーや展示会でも日本人同士が固まって座ったり、テーブルを囲んで話をしたりと、凡そ海外の人達との交流を積極的にしている風景を殆ど見たことがありません。 そこには言葉、特に英語の壁があるように思います。 その壁は日本人自身が作っています。

英語といえば、日本では机上の学問の一つになっており、学校では点数も付けられていますが、私は違和感を 感じます。 言葉は会話、コミュニケーションツールです。点数など意味がありません。 会話重視でいいと思います。 日本でも小学校などで英語教育が導入していますが、我々でも中学、高校、大学の教養課程と8年間も習いま したが、話すことだけは自分の独学や好奇心から何とかしていったように思います。 実際に、日本人が英会話力を上げるには、日本語を第1言語で必須にして、英語を第2言語で学ばせる位の取り組みをしないと、ただでさえ大人しく静かな日本人は上達しないのではないでしょうか・・・

英語で話してみると、世界が格段に広くなります。 相手の国やその人達のことも分かるようになります。 そして何よりもビジネスで役立つことになります。 日本語は1億2千万人ですが、英語を母国語としている国は多く、更に母国語でなくても英語を話す人達は更に多く、世界の共通言語は英語なんだと実感します。 決して、日本語ではありません。

多様性を享受することは、これからの日本には重要なことです。 ましてや少子高齢化の日本でビジネスを拡げることも大切ですが、それ以上に世界に出て行くことは、それ以上に大切です。 中小企業ほど足回りが良くて、小さな市場形成でも採算が取れやすく、決断までの時間と決裁者までのパスも少ないです。

私には高校時代に習ったある哲学者の話が今なお生きています。 ある考え方のグループと、それに異を唱えるグループがいて、論争を繰り返し、その両者が新しい結論を導き出 し、新たに新しいグループを形成していく。、 これが進歩だという話です。

その最初の2つのグループが一つに融和することが多様性の享受だと思います。 同じ民族で、同じ考え方で、同じやり方を続けていては進歩はありません。 当社はまだまだ小さな企業ですが、韓国人は3名(今年には5名になる予定)、ベトナム人1名(今年中にもう1名 入れたい)がいます。 考え方、習慣は違いますが、日本人以上によく働いてくれます。 そんな多様性のある企業にもっとして行きたい。 海外にもどんどん出て行きたいし、拠点も作りたい。 そして、多様性のある企業になりたいと思っています。

情報社会はもっと進歩し発展します。 仕事のやり方も変わります。 新しい価値観も出てきます。 アメリカやヨーロッパからだけでなく、アジア発の画期的な概念やビジネスも出せるような、そんな企業つくりを進めたい。 情報に関連した新しい事業を起こし、発展させたい・・・・ これが、私の多様性の享受から繋がる当社の社是の冒頭にもなっています。 わが他社のビジョンです。

今や以前と違い、大学生に人気のない業種と言われていますが、アジア諸国とは全く逆の現実です。 与えられるのを待つのではなく、自らが何かを創り出す、そんなICT企業を目指しています。 だから、通り一遍の新3Kなどと言われる業種だとまとめて言われると、逆に今の大学生も大したことないなあ、表面的な安定志向の多い就職観だなと思います。 道は自らが切り開くものであり、与えられるものではありません。 だから、しんどくても当たり前なのです。 それにチャレンジしたい、何かを成し遂げたい、そんな人達に未来は微笑むと信じています。

私は生きて働ける限りは働きます! 仕事は楽しいです。 苦しいことはいっぱいありますが、それでも楽しいと感じます。 楽しくない仕事でも自分の観かたや考え方が変われば、楽しくなることもあります。

縁があれば、貴方にもきっとどこかで会えます。 貴方が出会いたいと願っている職場も、貴方に出会いたいと思っているからです。 縁とはそんなことではないでしょうか・・・ 多様性すらそのように思います。

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