• 株式会社ビジョンクリエイト

小さな気付き 第83号

私は地下鉄を通勤に利用していますが、他の乗客と同じように良く車内広告を眺めます。 これが実に楽しいのです。社会をウォッチングしているかのように、いろいろなことが分かります。 車内広告というものは微妙に季節や社会変化を表していると思います。 そう思って眺めていると、小さなことですがいろいろな気付きがあります。

以前に、ある著名企業の社長さんから百貨店の地下街をよく観に行くと聞いたことがあります。 それは今、世の中でどんなものが売れているか、どんなものがダメになっているかが分かるからだそうです。その為には、何度も頻繁に通っていないと分からないそうです。 そういえば、自動車用品販売の某社の有名創業者が、毎朝、本社トイレを素手で清掃されているビデオを観たことがありますが、その中で「凡事徹底」ということを言われています。 平凡なこともやり続けていると見えないものが見えて来るという意味です。 また、100冊以上の本をお書きになっている某コンサルタントもこんなことをよく言われます。 「売れるか売れないか店の中に一日中立っていれば、1週間も続ければ何が売れて何が売れないか自然と分かって来ます。頭で偉そうに考えとるから分からないのです」と。

なるほど、この人達には何か共通するものがあります。 それは理論理屈も大事なのでしょうが、まずは実地検分が大事なのではないでしょうか?・・・ つまり、よく言われる現場主義です。 先程のコンサルタントがこんなことも言われていました。 「百聞は一見にしかず。百見は一験にしかず」と。 この後の言葉は馴染みのない言葉ですが、百回見るよりも一回経験すれば物事はよく分かるという意味です。 実際に私もそれに近い経験があります。 現在の場所に事務所を移転する際に、仲介会社の若い営業さんと一緒に物件を60件以上探しました。 相当に疲れましたが、見て歩いている内に見えないものが何かしら見えて来るように感じました。 天井までの高さだとか、坪数とか、家賃相場だとか、人気物件かどうか、そんなことが何となく分かるようになりました。

また、こんなこともあります。 現在の事務所に移転するまでに12年間の間、殆ど毎朝一人で事務所やトイレの掃除をやっていましたが、確かに見えないものが見えて来るように思います。 最初は人に対してのことばかりが頭に浮かび、人に求めているばかりの自分がいました。 また、ええ格好しいの気持ちよさもありました。 その次には、何でこんなことをしているのだろうとか、何の役に立つのだろうとか思いました。 更に次は、自分のことをいろいろと考えるようになりました。 自分の至らない点や起こったことは、自分のどこかに原因があったのだと思うようになりました。 そして更にそれからは、誠に不思議なのですが、トイレの便器が可愛く見えてくるのです。 擬人化したように、心の中で話しかけたり、昨日は良く頑張ったなと話しかけたり、何でタバコのポイ捨てがあるのかと怒ったり、実に様々な想いが心中で起こっていました。 相手は便器なのですが・・・ それがいとおしくなってくるんです・・・ 自分でもそんな気持ちになるとは思ってもいませんでした・・・

見えないものが見えて来るということについて、掃除をしていてこんなこともありました。 例えば、クリップ一つが誰かの机の上や下に落ちていたとしましょう。 そのクリップを他の人が見かけても大して何とも思わないと思います。 しかし、私はそんな人は注意力が足りないのではないかと思ってしまいます。 注意力が足りないとは言い過ぎと思うでしょうが、実際に掃除をやり続けていれば、起こっている事象は小さくとも、実はそれが大きなキッカケに過ぎないことが感じ取れるようになります。

例えば、机の引き出しが整理整頓されている人は、概して仕事が出来る人です。 グチャグチャの人は仕事がそれほど出来る人ではないと思います。 言われた資料一つ出すのにも整理されている人は直ぐに持って来ますし、整理が出来ていない人は引き出しの中をあっちこっち探したりて時間がかかるばかりか、「どこかにあるんだけれど・・・」と言った具合なのです。 これだけでも仕事が出来る人は小さなことがキチンと出来る人なのだと分かります。 また、一般事務職の派遣社員で上場各社から引っ張りだこのある女性がこんなことを書いていました。 「常に机の上に必要な書類は一種類だけです。仕事は常に一つずつ処理するのであり、今、必要でない書類は机の上に置いておく必要がありません」と。 だから、どんな仕事でも必要な一種類の書類だけを机の上に置けば事足りるのだそうです。 資料が山盛りになるなんてことはないのだそうです。 この方は次々と仕事をこなし、「出来る人」として有名で、何と本まで出しています。 言わば、派遣のプロと呼べばいいのでしょうか。 こんなことは当たり前のことかも知れませんが、その分、人はなかなか気付かないのです。 一度、その著作を読んでみたいものです。

まあ、ざあっーとこんな調子で書いてしまいましたが、私も年を経てきたせいか、世の中にはそんなに難しい真理はないんだと思います。 結構、シンプルで分かりやすくて、誰でも出来ることが的を得ていることが多いように思います。 かのアインシュタインもエネルギーの法則はシンプルですし、本人も「真理は単純で分かりやすいものだ。難しいものほど、どこかに間違いがある」と話しています。 最初に挙げた地下鉄の車内広告を眺めていての効能ですが、敢えてここでご披露しないことにします。 ただ、世間の動きが2,3ケ月先まで見えるように思うのです。 信じる、信じないは読者の方にお任せして、まずは1,2週間続けてみて下さい。 続けて頂ければ、「継続は力なり」だけは実感出来るようになると思います。

小さな気付きはやがて大きな変化を引き起こす「種」だと思います。 先程のコンサルタントの方が話されていました。 「観るというのはLOOKでなく、WATCHなのです。見て察することが観るという意味なのです。 だから見て察することが大事なのです」と。 けだし、名言だと感じ入った次第です。

いずれにせよ、私は若い頃に地下鉄車内の吊広告から、想像も出来ないかも知れませんが、SEとして資料のまとめ方やインパクトのある表現方法、或いは色使いなどを学んだことがあります。 小さな限られた紙面の中ですが、そこには凝縮されたノウハウや表現方法が溢れています。 また、直ぐに世間の景気変動を反映しているのも駅構内や車内広告です。 難しい本もあるのでしょうが、まずは身近な所に気付けば「なるほどなあ」と感じ入る広告も沢山あります。 実需ということなのでしょうか・・・ これからも車内外で目を凝らしてウォッチングして行きます。 ただ、ボッーとしていたのでは、気付くものにも気付かないし、生きていることも勿体無いし、何よりも老いが進むような気すらするのです。 インスタントラーメンの発明者である今は亡き安藤百福氏がこう言っています。 「いつでもチャンスはあなたの隣にあるのです」と。 さすがに脱帽です・・・

追伸:このコラムへ誤字をご指摘頂きましたS氏へ謝辞を申し上げます。有り難うございました。

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当初、今月は別のタイトルを考えていたのですが、たまたま観ていたYouーTubeで懐かしい歌手が歌っているのを観てしまい、自分の10代後半から20代始めを思い出してしまいました。その当時の友人や東京という大都会での生活や風景などが懐かしく思い出され、年を重ねた今になって懐かしい思い出となったその頃の話をさせて貰います。 私が若い頃は日本が高度成長期へ突進し始めており、経済成長と安保、ベトナム戦争と学