• 株式会社ビジョンクリエイト

食への欲望 第132号

私には旨い食べ物に対する一つの「こだわり」があります。

それは旨いものを食べるなら、普段は我慢してそれを食べず、本当に食べたいなあと我慢出来なくなった時に、その旨いものが少々高くても、遠くても、食べに行くというこだわりです。

具体的にその食べ物は次の通りです。 カツ丼、中華丼、皿うどん、うな重、蕎麦、豚シャブ、うどんすき寿司、焼肉、スパゲッティ、・・・ まあ、どれもこれも普通の食べ物です。 グルメのように思われるかも知れませんが、決してそうではありません。 いつの間にか、旨いものに出会っている間にそんな風になってしまったのです。 永く通っているところは10年以上にもなりますし、そんなに行かないところでも通っている期間が長いせいか、おなじみさんになっている店もあります。

そんなお店達ですが、決して常に同じ店に確定している訳ではありません。 そこよりも旨い店が見つかれば、そこと前の店は交代します。 但しです。但し、旨いものは食べ物そのものの味も重要ですが、それ以上に店で働いている人達の応対や接客もかなり関係します。

食べ物の旨さの本質はひょっとしたら、店の人達が要因として勝っているのかも知れません・・・ 間違いなく、皆さんが思っていらっしゃる以上に関係しています。

例えば、ある蕎麦屋さんですが、外からは絶対に旨そうな店には見えませんが(店には大変失礼ですが)、店内も外同様で狭い、古い、暗い感じなのです。外にあるサンプル品も、そのガラスもかなり汚れていますし、木造の店自体もちょっと傾いています。 一元さんならまず、入ろうという気にはならないと思います。

しかし、ここの蕎麦が旨いのです! 麺は少し固めに茹でてあり、蕎麦つゆは濃い目でちょっと辛口、蕎麦を箸で引き上げ、ツッーと一口で流し込む・・・実に、冷たくて喉ごしがいいのです。 蕎麦も旨いですが、出し巻きはフワッ~としていて、これまた絶品!

我が家全員がここのファンで、蕎麦を食べようとなるといつもここになります。 店のおばちゃんやお兄ちゃんと子供も顔見知りで、帰り際によくアイスクリームやお菓子を貰ったりしていましたので、恐縮するのもここの店です。 子供はいつも決まってざる蕎麦を注文していますが、ここのざる蕎麦が一番美味しいと気に入っているようです。

こんな見かけは入りにくい店ですので、当然のようにお客さんは常連さんばかりです。 正直なところ、他人にはこの店の自慢はしても、場所は教えたくありません。 知られない良さがあっても良い店だと言えるのです。

実は、このような店は見つけようとして見つけた店ではありません。 また、常に新しい店を探している訳でもなく、日常の中で偶然に見つけただけです。 あくまでもNo1は私なりのこだわりなのです。 結果的にたまたま有名店もあれば、全くの無名店もあります。

旨いものを食べたければ、普段は質素に暮らし、その分を旨いものを食べる際に一挙に吐き出すのです。 しかし、たまにしか食べられないと、自分の全ての味覚神経が集中してその旨みのエキスを吸い取ってしまいます。 つまり、旨いものはやはり、旨い! ということが分かるのです。

ただ、それら多くの店が歩いて行けるような近所にはないのです。 大阪市外もあります。京都や神戸すらあります。 どの店も私にとってはNo1なのです。 皆さんはそんなにこだわらなくてもいいじゃないかと思われるでしょうが、私にとってはそれが一つの楽しみでもあり、一つの我慢比べでもあるのです。

我慢比べといえば、こんな店もあります。 この店はそこそこ有名なうなぎ屋で、京都にあるのですが価格が高いのです。 にもかかわらず、我が家ではいつも最上のものを注文します。 これは決して自慢話をしたくて書いたのではありません。 日頃、我慢してどうしても鰻を食べたくなったら、ここでしか食べないのです。 わざわざ車を飛ばして大阪から食べに行きます。 前回は約2年振りに出掛けましたが、お店が新しくなり、しかも50メートルほど移動していた為、場所が分からず周囲を30分ほどウロウロしてしまいました。 その立派な店構えへの変わりように家族全員、ビックリしてしまいました・・・ それほど行けるところではないのです。

ここも初めて訪れたのはもう10年以上前になります・・・ 売れていそうもないポケット版サイズの観光マップ付ガイドブックで、偶然にもその店を見つけました・・・ 京都なのに関東から引っ越して来たと書いてありました。 これに興味が湧き、訪れたのが最初でした・・・ その小さな店はおよそ観光地にはふさわしくない「うなぎ屋」だと私は思っています。 また、観光地にあって他にも旨そうなお店がたくさんあるので、まさかこんなところで鰻など誰も食べないだろうと思うでしょうが、いつも賑わっているお店です。

他にもお店を紹介したいのですが、キリがありませんのでやめておきます。 これらのお店やそこに通う我が家にも共通した特徴があります。

1.いつも家族全員で出掛けている。 2.決して近所ではない。 3.食べたいものがいつも同じになる。 4.高くても食べたいものを注文する。 5.通い出してから結構永い。短いところでも数年以上。 6.旨いところがあると聞けば、出掛けてランクの入替えもある。 7.店の方と顔見知りになる。長続きする要因にもなります。 8.店の方の愛想が良い。商売にはこのような鉄則があります。 9.お茶や水にまずいところがない。 10.店を出た際に、食べたばかりなのにまた来たいと思う。

旨い店には必ず共通したものがあります。

それは建物や室内の良さではなく、そこで働く人達がかもし出す「おもてなしの心」みたいなものではないでしょうか?・・・ 同じ商売人として、このようなお店と比較して当社はどうなのだろうか?と自問してしまうのも、これらに共通する見方です。

遠くても、高くても、そこに食べに行くお客さんが私のようにいるのです。 この事実が「商いの原点」のような気がします。 毎日、精進、これが我々に課せられた道なのではないだろうか? 自分達を高めることこそが究極の生きる目的ではないかと・・・ こう思うとつい、旨いものをどこかに探しに行きたいなあと思います。 人間の持つ欲の一つである食欲です。決してなくなりはしないものです。

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当初、今月は別のタイトルを考えていたのですが、たまたま観ていたYouーTubeで懐かしい歌手が歌っているのを観てしまい、自分の10代後半から20代始めを思い出してしまいました。その当時の友人や東京という大都会での生活や風景などが懐かしく思い出され、年を重ねた今になって懐かしい思い出となったその頃の話をさせて貰います。 私が若い頃は日本が高度成長期へ突進し始めており、経済成長と安保、ベトナム戦争と学