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IoT時代 第189号

よく最近、IoTという言葉をよく見たり、聞いいたりするようになりました。 当社もIT業界的にも、情報の付加価値変化からも、IoT事業へ進出しました。 しかし、従来のIT技術とは次元が異なる技術や知識が必要になっているだけでなく、社会に大きな 価値変化が起こりつつあるのではないかと思い始めています。 今月はそんな話をしてみたいと思います。

日本は情報化社会と言いながら、産業の中心はまだまだ製造業、それも中小企業が大半です。 しかも、世界的に低コストの壁に阻まれています。 工場ではいろいろな機械が動いており、その機械には多くのセンサーが取り付けられています。 IoTシステムでは、それぞれのセンサーからのデータを異なる通信プロトコルを経由してゲイトウ ェイを介して最終的にサーバーのデータベースへ蓄積します。 蓄積されたデータベースへ対して、瞬時に、或いはバッチ的に処理して、人に分かり易い形への 「見える化」を行い、その結果を観て適切な生産プロセスへの「制御」を行い、最終的にこれら一連の 判断や指示を「自動化」しようとする仕組みが一般的な製造業向けIoT例ではないでしょうか。

この3つのステップに必要となるIT技術とは、センサーからの膨大なデータを蓄積して取り出したり する「ビッグデータ」技術であり、更にその膨大なデータを分析し傾向を見つけたり、その後に解析を 行い、予測等へ活用する「AIがあり、インターネットなどの通信での機密性を確保する「セキュリテ ィ」技術が必要になります。 IoT社会ではこれらの高度な技術のニーズが高まって来ます。 私はこれ以外にも、既存システムとの連動の必要性も高くなると考えています。 例えば、在庫管理システムや物流システム、財務システムなどの取り込みです。

IoTに関してIT業界ではそのニーズが年々高まっており、かつてのERPニーズのような状況が生 まれるのおではないかと思います。 既に、そのような傾向が世界的には出て来ていると思います。 日本はやや遅れている感じがしますが、きっと遅れまいと一気にニーズが高まるのではないかと思います。 また、IoT社会ではIT業界ばかりではなく、センサー業界もコントロール機器業界も、コンピュータ のハードウェア業界にも、そして我々と同じIT業界にもビジネスチャンスがあるばかりか、情報社会へ の価値変化も訪れて来ているように思います。

それは、かつてIT業界、特に日本のIT業界はソフトウェアに対して、もの作りのように業務プログラム やパッケージソフトウェアを開発し、主に処理を目的とした価値を販売することで業界として成立していま したが、どうもIoTあたりから付加価値が「情報の持つ価値」へ変りつつあるように感じるのです。 日本もそろそろ単価や原価といった労働対価基準から情報価値を問う基準へ切り替えなければならない時 に差し掛かっているのかなと思います。 少子高齢化、労働人口減少、多様な働き方、労働時間抑制、外国人労働者増加などは、正にそれらの背景 要因になりつつある証拠ではないかと思います。 工数や単価では価値社会として限界があります。

しかし、情報価値とは言いながら、日本人は目に見えない価値を捉えるノウハウや知恵に欠けます。 例えば、労働時間抑制、プレミアムフライデーなど立法府が掲げ、一部の大手企業が取り入れていますが、 その実、立法府も行政機関も、どうやって労働時間抑制をしてでも生産性や品質を高める指針や指導まで は一切何も言及していません。

私に言わせれば「ただの無責任な示唆」です。 規制だけ言って、それを実現する提案や指導については何も具体策がないのでは、江戸時代のお上と同じ で年貢を上げるぞという話と全く同じです。 言うだけ言っておきながら、努力だけは企業へ丸投げ、押しつけでは企業が疲弊するだけです。 大手企業はまだしも、中小企業では「どうしろって言うんだ?」との声が高まるだけです。

このあたりが、労働先進国と言われるドイツとは違い過ぎます。 ドイツでは法律で有休休暇と病欠は別々に取得出来ますし、長期休暇も法律で決められていますし、仕事 の生産性も高い。 担当者が長期休暇で休んでいても良い法律になっているし、仕事は重複して他の社員が代行出来る仕組み になっています。

どうも日本人は、真似て改善するのは上手ですが、独自性には欠けます。 現に日本の立法府も行政府もそのようです。 つまり、発明とか、ゼロから何かを生み出す力が弱いです。 真似は直ぐにできます。労働時間抑制そのものもその典型です。 先進諸国に言われるから、不公平条件だからという訳でしょうか。 生産性を高める策の示唆はありませんし、どこかの国を真似ようとしても法律や価値観など根底から異な る為、取り入れることが出来ないばかりか独自な仕組みや制度が作れません。

例えば、姿が見えず、直ぐに消えてしまう音を捉えることに成功したのは西洋人です。五線譜の発明です。 蒸気機関もそう、飛行機もそう、自動車もそう、コンピュータもそう、インターネットもそう、ERPも そう、IoTもそうです・・・ 私はこんなことまで「情報価値」だと捉えています。

それは、単一民族であるが故に多様な価値観に欠けるからだと思います。 いろいろなアイデアや価値観を認めにくいのです。 日本というか、もっと我々日本人を元気にするには「多様性の享受」が不可欠だと思います。 IT業界なら尚更です。 何故なら、インターネットの先には世界が直結しているからです。

IoTでは技術や知識だけでも従来のIT業界とは異なります。 しかし、よくよく考えると、昨日も1週間前も1年前も5年前も同じことをやっていたらとしたら、それは 進歩がないことだと思いませんか? IoTにチャンレンジするのは確かに大変です。 人、もの、お金が必要です。 しかし、チャレンジして行かなければ、それは衰退を意味します。 異端児は嫌われるかも知れません。 しかし、その異なる価値観が今からは必要なのです。

何が当社にとって成功するのか、そんなことは分かりません。 やりたいのか、やりたくないのかが一番重要だと思います。 やらなければ、それこそリスクしか残りません。

改めて繰り返しますが、トヨタ自動車は従来から内燃機関エンジンの車を作っていましたが、今やハイブリ ッド車より電気自動車の時代です。 ボーイング社のジェット旅客機も従来は金属製の胴体を使っていましたが、今や繊維会社が生み出した炭素 繊維が中心になっています。 また、日本の家電メーカーが低迷し、次々に買収されたり破綻したりの世の中です。 これから5年先、10年先、20年先はどうなっているのでしょうか?・・・

私はよくこんな空想をします。 きっと今のこの瞬間にも、日本で明日の著名企業になっていく小さな会社が日本のどこかにある・・・ そんな会社は今、どこで、どんなことをしているのだろうか?・・・ そんな会社が当社だったら嬉しいなあと。 いつか、当社にその順番が回って来て欲しいなあと。

IoTは、IT業界にとって一つの新しい飛躍のチャンスです。 従来の価値観ではなく、新しい価値観が求められている・・・ チャンスに乗るだけでもいけない、チャンスを作れる会社にしないといけないと。

やはり、多様性の享受があってこそ価値観も多様化し、新しい価値が生み出せると確信します。

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