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原理原則 第53号

最近、IT企業の某社が世の中を騒がせていますが、その話に関連して私も意見を書いてみたいと思います。

私共も広義で言えばIT企業ですが、実際には情報処理サービス業が適切だと考えています。泥臭くて地味な仕事であり、体力も結構必要ですし、脚光を浴びるようなことは殆どありません。どちらかと言えば縁の下の力持ち的存在ではないでしょうか。 しかし、世の中は情報化社会であることに間違いなく、情報システム活用が業種を問わず重要な経営資源になっています。 スピードや正確性、膨大な顧客情報や付加価値データベースなど企業にとっての生命を左右することすらあります。 例えば、銀行の中小企業融資判定は支店長とか人ではなく、コンピュータへの入力データに基づくランク結果で決まります。 また、金融システムの障害や課題は一国の信用すら危うくします。 スーパーでもコンビニでも、自動販売機も、回転寿司の店員さんすら携帯機器で勘定をします。 今や世の中はコンピュータなしでは考えられません。 そんな社会で先程の事件は起こりました。 世の中が全体的にデジタル化して来ており、旧来のアナログ的価値観が軽視されて来ているように思います。 例えば、部屋の中にパソコンが何台かあって、デジタルデータを観ながら瞬間的にお金のやり取りを行い、幾ら儲けたとか幾ら損したとか言っている若い人達がいますが、私はおかしいと思っています。

汗水流して働いて、手にした1000円札と、キーを叩いて手に入れた1000円札は同じ貨幣であってもその意味する重みは同じでしょうか?・・・ 重みが違っても同じお金ではないですかという人がいますが、お金に対する思い入れや扱い方が違って来ると思うのです。 つまり、投機的な投資などしない人達から観ると、何か変だと思うのです。 お金に一喜一憂している醜い姿が重なって見えるのです。

日本は戦後、先人達の身を粉にした努力によって今日の繁栄を手に入れました。 その上で私達は生きています。 戦後はアメリカの支援によって民主主義や資本主義経済を取り入れて来ました。 しかし、その中には良いものもあれば、取り入れを慎重にすべきものや、場合によっては拒否すべきものもあったのではないでしょうか・・・

日本では、企業は株主だけのものではありません。 そこで働く社員やその家族、お客様、協力会社のものであり、何年もかかって経営者と社員が確保した内部留保のお金を株主へ全部還元するような欧米型企業社会ではないと思うのです。 しかるに、最近TOBなる方法を使い、資本の力で永年かかって蓄積した企業資産を一挙に手にいれようとする人達がいます。 確かに法的には認められていることでしょう。しかし、法律で明記されていない良識もあると思います。 自分さえ儲かれば他の企業がどうなろうが構わない、社員やその家族の生活など知ったことじゃないといった姿に見えるのです。 その延長線上に汗水流さずにパソコンの前で一喜一憂する人達が重なって見えるのです。 それを観ている子供達はどんな大人になって行くのでしょうか?・・・ お金が全て、働くのは代償としてお金の為だけ・・・ こんな世の中になって良いのでしょうか・・・

私は小中学生の頃、社会科で「日本には資源がないので、それを輸入して、それを加工して輸出して成り立っている国です」と教えられました。 正にその通りの立国条件だと思うのです。 それどころか最近は食料でさえ輸入に依存している状況です。 品質の高い商品や食料がどんどん海外から輸入される時代であっても、それでもやはり、日本は製造業を中心とした付加価値付加国であり、根本的な立国の条件=原理原則だと思うのです。 その立国を堅持する為に私達は、「知恵や工夫を大切にし、勤勉に努め一生懸命に働く」を旨としなければならないと思います。 これから若年者人口が減少し、高齢者比率が急激に上昇して行くことが明白である以上、若年者の非就業化やフリーター化は根源的な問題です。

アメリカと日本は永い時間の中で人類学的に考え方や価値観が異なっています。 例えば、企業観がそうです。 アメリカでは企業は大株主のものであり、経営者は四半期ごとに損益状況がチェックされ株主の期待に添えなかったら排除されます。 10億も20億も報酬を貰う経営者は日本にはいませんが、そんな高額が貰えるのは大株主が高い配当や還元を求めて期待し、報酬くらいは安いものだから認めているのです。 一方、日本では企業は株主や社員や経営者や顧客や協力会社に支えられています。 法的には違うでしょうが、日本人はそのように考えて、社員と経営者が一丸となって頑張って来ました。 企業に蓄えられた内部留保はそんな人達の苦労の末の財産です。

ところが、アメリカではそんな内部留保も株主に一挙に還元しろ、配当しろと迫ります。 これが機関投資家から集められたファンドの実体ではないでしょうか?・・・ つまり、日本人の従来からの価値観に対し、法的隙間を利用し弱い部分を攻めたてて金銭を貪るやり方なのではないでしょうか?・・・(但し、合法的なのです) お金が全てという企業観こそ、立国の原理原則を危うくする価値観だと思うのです。 日本人は欧米人にならなくてもいいと思います。 日本人は日本人であって良いのです。 日本人の最大の長所である「和」を基軸に、新しい知恵や工夫を企業にも作ればいいと思います。 私は新しい形の終身雇用を目標の一つに挙げています。 明日はどうなるか分らない雇用環境よりも、明日も働ける信頼や成長を前提にした経営の方が、人間らしく生き生きと働いて貰えると信じます。 その為に経営者も社員も一丸となって苦労と共にして行かなければならないのです。 株式公開や上場が全てではないと思います。 社員の雇用を守り、その家族を安堵させ、世間や社会に少しでも貢献できる企業に育てて行くことが大切だと思います。

額に汗する、苦労をする、知恵や工夫を尊ぶ、人を大切にする、共に一生働く、お互いに助け合う、和を大事にする、家庭や家族を大切にする、先輩や年長者を敬う、部下を大事にする、ものを大切にする、ありがとうと言える、・・・・・こんな会社がいいと思います。

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