金融事業への異業種参入が相次いでいます。
KDDIはネット証券大手のカブドットコム証券に出資すると発表しました。
無料対話アプリのLINEなども金融事業を伸ばそうとしています。
各社がめざすのはスマホなどを使った簡単で幅広い金融サービスです。
数千万単位の本業顧客を金融サービスに誘導し、取引データを蓄積できれば様々な形で多重活用できるメリットもあるのでしょう。
異業種参入が金融業種・業態勢力図を変えていくことが予想されます。
「通信会社からライフデザイン会社に変わっていく」。
KDDIはそのような構想を持っているようです。
KDDIは三菱UFJ銀行などと協力しながら、ネット銀行・保険・資産運用などの事業を矢継ぎ早に立ち上げており、
証券事業を手に入れれば、目標とする「総合金融グループ」の完成に近づく見通しです。
スマホで一括したワンストップ金融
スマホさえあればどんな金融サービスもワンストップで利用できる――。
各社はこんな姿を目指します。
現時点でも電子マネーで電気代などを支払い、ネット銀行で貯蓄することができます。
株式取引や投資信託の販売といった証券関連事業もそれに加わります。
金融消費者の”金融情報”を統合すれば、”貯蓄”・”借金”・”保険”などがどうなっているかを
一覧にして分かりやすく表示するといったサービスも可能になるでしょう。
金融消費者一人ひとりの取引データを分析することで、
One to OneかつOnly Oneの最適投資手法を指南することが可能になり、
参入業者と金融消費者の両者にWinWinの関係が構築できます。
このように、金融事業には異業種参入が相次いでいます。
LINEは野村証券と組んで「LINE証券」の設立準備を進めています。
銀行業にも2020年メドに参入する模様です。
ソフトバンクは人工知能(AI)で利用者の信用力を測るJスコアを
みずほ銀行と共同出資で始めました。
NTTドコモは携帯電話の支払いなどでたまるポイントを使った投資サービスに踏み出しています。
通信事業者・小売業者はその分厚い顧客基盤を生かせる強みがあります。
金融事業への参入で先行した楽天は、
傘下の楽天証券の総口座数が2018年末で300万を超えており、業界2位の大和証券に並びつつあります。
本業であるECサイト利用者を証券事業に誘導することで多角的なデジタル経営が実現できます。
先駆者アリババ
金融事業には「データ獲得」といううまみがあります。
データ分析が得意な通信やIT大手にとって、金融消費行動に直結する金融データは「宝の山」となります。
取引履歴データ分析を通じて本業と金融事業の相乗効果を高めることで飛躍的に業績向上が図れます。
こうした動きの先駆者は中国のアリババ集団でした。
スマホ決済の「支付宝(アリペイ)」が急成長し、
2018年に160兆元(約2600兆円)まで拡大したとされる中国のスマホ決済の5割強のシェアを握っています。
アリババには通販・コンビニ・レストランなどでの決済・個人間送金といった、
取引履歴が集まり、金融消費者の”格付け”や”与信枠設定”にも活用できるのです。
金融消費者の余剰資金を運用する中国版のMMFは2018年末で残高が1兆1千億元を超えたとのことです。
1990年代以降の「日本版金融ビッグバン」の時期にも事業会社も含めた異業種による金融事業への参入が相次ぎました。
その後、ソニー系など一部を除いては”撤退”や”縮小”を余儀なくされた経緯があり、
新規参入勢が事業を維持していくのには一定の難しさもあるでしょう。
しかし、今後は業種・業態を超えたデジタル金融の連携が進むことになり、
IT業界にとっても大きな案件拡大の機会到来と言えるでしょう。
当面、デジタル金融・デジタル経営の波には注目しておくべきと考えます。
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