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vol.135- 「FIWARE(ファイウェア)」

■スマートシティの共通基盤「FIWARE(ファイウェア)」

AIやIoTといった先進的技術を活用して、生活の質やサービスの利便性を高めたり、社会の課題解決や新たな価値創出を図る「スマートシティ」。国外だけでなく日本国内においてもスマートシティ実現の動きはここ数年で活発化しており、国土交通省がスマートシティ官民連携プラットフォームを設立したり、トヨタが「Woven City(ウーブン・シティ)」と呼ばれる実験都市の開発をスタートさせるなど、官民問わず様々な取り組みが為されています。


スマートシティを実現するには様々な課題がありますが、特にデータをどのように共有して活用するかが重要となります。例えば、防災、防犯、インフラ、環境、観光といった各種サービスに必要な情報は、自治体や企業が保有するデータや街の中にある様々なセンサーから収集されますが、それぞれ管理するシステムによって独自のフォーマットで保存されていたり、取得方法が異なったりします。このようにデータのフォーマットや取得方法が統一されていない状態では、データをスムーズに利活用できず、サービス開発の大きな壁となっています。

そこでデータ連携の共通基盤として注目されているのが「FIWARE(ファイウェア)」です。


「FIWARE(ファイウェア)」とは、EU(欧州連合)において、官民連携によって開発された次世代インターネット基盤ソフトウェアです。欧州を中心に世界中でスマートシティの共通基盤として数多く利用されており、日本においても自治体等での利用が始まっています。

例えば、高松市ではデータ連携基盤としてFIWAREを採用し、防災分野でリアルタイムにデータを可視化するシステムなどが構築されています。ダッシュボードには、スマートメーターからのデータを基に避難所の開設状況や停電状況を表示したり、河川・護岸に設置した水位/潮位センサーだけでなくオープンデータとして公開されている水位・潮位・雨量のデータも併せて表示するなど、様々なデータを一カ所でまとめて表示するシステムを実現しています。これらはリアルタイムに状況を把握することに役立ち、早期の災害対策に活用されています。

高松市のデータ連携基盤としてFIWAREを採用し、防災分野でリアルタイムにデータを可視化するシステム

図1:全体イメージ


■FIWARE(ファイウェア)の特徴

FIWARE(ファイウェア)はオープンソースソフトウェア(OSS)として7つのカテゴリー、数十種類のモジュール群で構成されており、利用目的に応じて自由に組み合わせることが出来ます。これらの実装例は「FIWARE Catalogue」として公開されており、これを参考に必要なモジュールを組み合わせたり、独自の機能を追加することで、サービスを実現します。OSSなのでライセンス費用を支払う必要もありません。

また、データの受け渡しは、OMA(Open Mobile Alliance)で標準化された「NGSI(Next Generation Service Interface)」という規格に基いて行われます。柔軟性の高いデータモデルであり、データ検出や取り込みの為のAPIも用意されています。

このように、低コストかつ効率的にサービスを開発・提供する仕組みを備えています。

FIWAREの概念図

図2:FIWAREの概念図


それに注目すべき特徴として、各モジュールはそれぞれ独立した「マイクロサービス」として動作するように設計されており、サービス間はAPIを使って連携します。その為、機能追加や障害の影響をシステム全体に波及させることなく局所化できます。このことは、サービスの安定性の向上や運用コストを抑えることに貢献します。また、オープンAPIを通じて他のシステムと連携することが可能であり、特定のベンダーに依存する「ベンダーロックイン」の回避にも繋がります。


データ共通基盤として優れた点が多いFIWAREは、スマートシティ実現のためだけでなく、ベンチャーや中小企業が新たなサービスを創出する上でも利用されており、今後さらに幅広い分野で利用・発展していくものと予想されます。


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