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vol.92-クルマ自動運転のルール整備へ

※諸般の事情により当メルマガ Vol.92を5月に発行出来ませんでした。ご愛読頂いております読者の皆様に心よりお詫び申し上げます。

 クルマ自動運

クルマ関連産業は雇用・経済の両面で日本を支える基幹産業で、資源の乏しい輸出立国のまさに屋台骨である。 しかし現在、クルマ関連メーカーは大きな岐路に立たされている。 世界市場で電気自動車や自動運転技術などの新しい技術とその実用化が急速に進んでいるからだ。

とくに電気自動車ではエンジンはじめ、各種シャフト・オイル、排ガス浄化装置・部材など日本メーカーが得意とする多くの主要部品・部材が必要でなくなる。

これは長い年数をかけて優れた技術を積み上げてきた専業メーカーの一部にとっては死活問題だ。 自動運転技術もその性格上、おそらく国際標準化されるだろうから、これに乗り遅れるとライバルとの競争で不利になる。 クルマ関連製造業の研究開発費は年間2.4兆円であり、全製造業の21.4%を占め、飛び抜けて多い。

これを新技術に注いで世界市場における地位をなんとか維持、向上させようともがいている。 トヨタ自動車・豊田章男社長の発言は、その切迫感を如実に伝える。 2017年11月、異例の大規模人事を発表し、以下のように話した。

「自動車業界は100年に1度の大変革の時代に入った。 次の100年も自動車メーカーがモビリティ社会の主役を張れる保証はどこにもない。 『勝つか負けるか』ではなく、『死ぬか生きるか』という瀬戸際の戦いが始まっている」

 クルマの主流は「所有」するものから「利用」するものへと移行しつつあり、その先には「MaaS」という大きなうねりが見えている。 MaaSは「Mobility as a Service」(サービスとしてのモビリティ)の略である。 スマートフォン(スマホ)を介して、カーシェア・鉄道・バス・タクシーなど、あらゆる移動手段をシームレスかつワンストップで利用できる。 こんな移動革命が世界を席巻しようとしている。

 自動運転車が実用化されることを前提にすると、世界におけるMaaSの市場規模は、2035年に8,000億ドル(約88兆円)、 2050年には7兆ドル(約770兆円)にまで達するとの見方もある(米インテルと米ストラテジー・アナリティクス調べ)。 この市場の恩恵を受けようと、さまざまな業界・企業が群雄割拠しており、すでに乱戦模様となっている。

さらに、クルマ自動運転の実用化に向けた警察庁のルール作りが本格的に始まった。 条件付き自動運転(レベル3)での走行中にスマートフォン(スマホ)操作やテレビ視聴、読書を認めるか、 あるいは事故を起こした場合に誰が責任をとるかなど、論点は多岐にわたる。

レベル3は今から2年後の2020年にも実用化する見通しで、迅速な検討が必要となる。

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 警察庁は2018年5月22日、学識経験者らによる調査検討委員会の今年度の初会合を開いた。 海外視察やメーカーのヒアリングを経て、道路交通法改正の必要性を含め2018年度内に報告をまとめる方針である。

 検討課題のうち、ドライバーの関心を集めそうなのが、走行中の運転以外の行為をどこまで認めるかである。 レベル3は原則システム操作が運転を担うが、緊急時には人間が代わることになる。 これまでの調査検討委の議論では、飲酒や睡眠はダメだが、テレビ視聴・携帯電話操作・食事などはシステムの性能次第で認めてもいい、という意見があった模様である。

 道路交通法70条は「運転者はハンドル、ブレーキ等を確実に操作する」などと安全運転義務を規定している。 また同法71条は運転中の携帯電話使用を禁じ、いずれも罰則規定がある。 しかし、現実には、片手で運転しながらスマホで会話しているケースが散見される。 こうした実態を踏まえ、レベル3では運転操作以外に一定の行為を認めた場合、 これらの規定を見直す必要が出てくるだろう。

 事故やトラブル時の責任問題では、「本来の使い方に従っていれば使用者は責任を問われない」とする意見が根強い。 事故原因究明のためには走行中の記録も重要になることから、データの保存や改ざん防止の仕組みづくりも課題として挙がっている。 自動車保険の事故査定においては、ドライブレコーダの記録は重要な証拠として扱われる。 運転手は自己を守るために、より安全なクルマに対する関心は高まるだろう。

 自動運転をめぐっては、運転者の関与を前提にしたジュネーブ条約との整合性も課題になっている。 日本も同条約を批准しており、国際的な動向もにらみながらの議論になりそうだ。 政府のロードマップでは、2020年が一つのメドになる。高速道路で一般車の「レベル3」が実用化するほか、限られた地域では無人運転(レベル4)もスタートする。 2019年中にルール整備をする必要があり、警察庁は「スピード感を持って議論したい」(担当者)としている。

 近い将来、クルマは陸上のみならず、水上(海上)や空中も走り回るようになるだろう。 自動運転をめぐって、産業構造が大きく動く可能性がある。 利便性は増すが、安全面での課題もある。 しかし、ひとたび安全が保証されるようになると急速に普及しだして、そこに大きなビジネスチャンスがあることは確かである。

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