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vol.102 – eスポーツ

情報通信技術は、様々な産業を発展させ、消費者の「働き方」や「暮らし方」を大きく変えてきました。

そして、今、情報通信技術が生み出した

「新しいスポーツ=エレクトロニック・スポーツ(以下、「eスポーツ」)」が注目されています。

スポーツ・ゲーム、そしてテクノロジの世界に大きな変革をもたらすと見られているのが「eスポーツ」です。

国際的なスポーツ競技大会で「正式種目」に採用された「eスポーツ」

 

「eスポーツ」とは、個人戦またはチーム戦で争われるコンピュータゲームをスポーツ競技として扱うときの呼称です。

しかし、「たかがコンピュータゲームなのにそれが”スポーツ”になるの?」でしょうか。

特に「スポーツ」という言葉に体育・運動系イメージが強い日本では、

座ってプレーするコンピュータゲームをスポーツと呼ぶのには違和感を覚える人もいるでしょう。

一方、本来のスポーツという言葉には「楽しみ・競技・娯楽」の要素があります。

走ったり、ジャンプしたりといった身体の運動量は多くはない、

例えばモータースポーツ・ビリヤード・ダーツ・射撃などもスポーツとして認識されてきましたし、

チェスもマインドスポーツといわれています。

スポーツとして必要な要素は、身体的な運動のみならず、集中力や戦略性によって勝ち負けを競い、

それを楽しむ精神にあるともいえるでしょう。

2018年8月にインドネシア・ジャカルタで開催されたアジア大会で、「eスポーツ」は公開競技として実施されました。

さらに2022年に中国・杭州で開かれるアジア大会では、正式なメダル競技となることが決まっています。

つまり、陸上や水泳、サッカーなどと同じように「スポーツ競技」として扱われるのが世界的な潮流なのです。

eスポーツ

 

世界規模で見た「eスポーツ」の成長スピードは急激で、

市場規模も拡大し続けています。世界的な「eスポーツ」の競技大会では、

「優勝賞金1億円・賞金総額3億円」といった大会も珍しくなく、

中には「優勝賞金10億円以上・賞金総額20億円以上」という大会があるほどです。

 

「eスポーツ」のタイトルにはインターネットゲームが多いこともあり、インターネットメディアが中心となって情報発信を行っています。

競技人口も億単位をはるかに超え、さらに急成長を遂げています。

そうなるとマーケットも黙っていません。

周辺産業への投資が急拡大しています。

大会にはもちろん、選手個人にも、ゲームメーカー・PCメーカー・IT企業・飲料会社といった”スポンサー企業”がついています。

既存の「リアル」スポーツ業界も、このマーケットを新しい収益源の1つとして着目しています。

全米プロバスケットボールのNBAは、「eスポーツ」リーグの運営に乗り出しました。

これは人気ゲームタイトル「NBA 2Kシリーズ」を使って、NBA同様のリーグ戦とプレーオフを行うというものです。

今後はNBA以外の他スポーツビジネスも、「eスポーツ」に参入することが予想されます。

 

アメリカの大学では、優れた「eスポーツ」選手を学費免除の条件で勧誘するスカウト合戦が激化しています。

また中国では中国国家体育総局が正式スポーツ種目として採用し、国を挙げての強化に乗り出しました。

韓国・釜山には世界で46か国と地域が加盟する国際「eスポーツ」連盟の本拠が置かれ、「eスポーツ大国」といわれています。

早くからパソコンとインターネットを気軽に使える環境が整っていたため、

パソコンで動作するゲームプレーヤが非常に多いのがその理由です。

ヨーロッパ諸国でも同様の現象が見られています。

 

日本でも始まった「eスポーツ」への取り組み

 

他国に比べると日本国内での注目度はやや低いようです。

それでも、国際的な大会に備えていく必要性から、

2018年には日本「eスポーツ」連合、日本「eスポーツ」リーグ協会といった団体が設立されました。

 

しかし、日本での「eスポーツ」を「eスポーツ先進国」と同様に成長させるためには、法律面の整備や、

 

行政によるバックアップが必要となるため、今後はこうした団体の活動が重要になります。

 

2018年春、Jリーグも「eスポーツ」の大会を主催しました。

 

優勝者には世界大会への出場をスポンサードするというもので、

実際に優勝者は世界大会の決勝トーナメントまで勝ち上がりました。

この結果からも、日本国内トッププレーヤが世界でも活躍することが、今後期待できます。

 

一方、大手芸能プロダクションの吉本興業も、「eスポーツ」事業「よしもとゲーミング」を発足させました。

 

こちらは、現在世界大会で高額賞金のかかっているゲームを対象として、プロゲーマとプロチームをコラボさせようというものです。

 

世界一をめざして賞金を狙おうという「本流」での勝負だけに、その先行きが注目されます。

 

「eスポーツ」では、さまざまな視点から映像を楽しめるのも特長の1つです。

 

これまで、スポーツといえば、スタジアムに足を運ばない限り、テレビ映像を観戦するのが一般的でした。

 

しかし「eスポーツ」では、特定プレーヤ視点に切り替えるのも自由自在です。

 

卓越した技術を持つ「プレーヤの視点」で見れば、よりゲームに入り込むことができるでしょう。

 

ドローンカメラのように競技が繰り広げられている中を自由に移動して戦況を観戦したり、実況したりすることも可能になるのです。

 

これは、テクノロジ進化がもたらした新しい観戦スタイルといえるでしょう。

 

さらに、「eスポーツ」とVR(Virtual Reality:仮想現実)技術が融合すれば、新たな世界が広がります。

 

プレーヤが「リアル」を感じるのはもちろんのこと、観客も同じ体験ができるからです。

 

例えば、アリーナやスタジアムで繰り広げられる「eスポーツ」対戦を、観客がVR体験できるようにするなど、

 

時間と空間を超えてエンターテインメントビジネスを展開することも可能になるかもしれません。

 

実際、すでにVRゲームを対象とした「eスポーツ」リーグも立ち上がっています。

 

情報通信業界の中でも、「面白いこと」・「刺激的なこと」に特化して成長してきたのが「eスポーツ」業界といえます。

 

グラフィックやサウンド、傾きや加速度センサ、今後はAI(人工知能)や、

さらに高速なコンピューティングテクノロジなど、先端技術を積極活用して、もっと進化していくと考えられます。

 

それは言い換えると、BtoCでプレーヤが使う技術、それを支える基盤としてのBtoBの領域でも新たなビジネスチャンスが生まれてくるとも考えられます。

 

「eスポーツ」は、そこに取り入れられた最新テクノロジを、プレーヤが駆使して競い合うところに面白さがあるといえます。

 

人間の身体能力や競技スキルに加えて、急激に進化するテクノロジとそれに適応する人間の精神的・身体的技能との融合が必要不可欠なのです。

 

情報通信技術の世界では、どんなに技術が進化しても、

つきつめていくとそれを使うのは人間であるということがよくいわれます。

 

「eスポーツ」はそのことを明確に伝えてくれる新たな競技だからこそ、

多くの人からの関心を集めているのかもしれません。

 

2020年の東京五輪に合わせて、ゲーム対戦競技「eスポーツ」の世界大会が日本で開かれます。

 

IT業界に関わる人は、一度は体験しておいたほうがいいかしれません。