生成AI時代 第274号
- 社長
- 2024年6月1日
- 読了時間: 6分
更新日:1月31日
最近と言うか、正確には2年も経っていませんが、私達が今まで経験したことの
ない驚きが世界中へ拡がりました・・・
例えて表現すると、今から170年前の1853年、嘉永6年に永く鎖国をして
いた日本へ、アメリカ東インド艦隊のペリー提督が率いる4隻の黒船が横須賀の
浦賀沖に突如として現れた時くらいの衝撃だと思われることが起きました。
ペリー提督の時は日本へ矢継ぎ早やに開港や貿易取引など、不平等な契約などを
迫まられ、かつてない右往左往の対応に江戸幕府は見舞われました。
後には、イギリスやフランスに各種条約や開国を迫られ、日本国内も攘夷だの、
公武合体だの、勤王だの、佐幕だのと大騒ぎtになり、やがて戦乱も起きました。
しかし、かなり衝撃的なことが2年前に起こりました。その出来事では騒動も武
力衝突も起きず、ましてや政治的圧力も起こりませんでした。
ただ、世の中が頭をガツーンと叩かれたような強烈な衝撃を受けました・・・
その出来事とは一体何か?
それは2022年11月に世界中の人々が驚いたことです。今では生成AIの代
名詞となったChatGPTが登場したことです。私自身、IT業界で40年以上も働
いていますが、これほど驚いた新技術の経験はありません。正に歴史的快挙でし
た・・・
私は咄嗟に、世の中が変わる、社会が変わる、IT業界が変わると直感しました。
若かりし頃、日本ではICOTと呼ばれた、国が予算を出し、新しい論理型プロ
グラミングを使ったコンピュータ技術を実現しようと何度も中断しては再起した
プロジェクトでしたが、結局はそこまでの新技術までには到りませんでした・・
その当時、日本中の頭脳が研究発表会を開いていました。私もprologやLispとい
った論理型プログラミング言語を使って簡単なプログラムを書いた経験がありま
す。当時のPC では直ぐにメモリオーバーとなる時代で、机上学習では集合論の
勉強ばかりやっていた記憶があります。正直なところ、そんな学習は面白くも楽
しくもありませんでした・・・
今でも思い出すのは三段論法とか、導出法とか、バックトラックとかのキーワー
ドで、集合論に沿ってプログラムを書けば、バグのないプログラムが書けるとか、
皆でそのような話として盛り上がっていました。
あれから随分と歳月が流れましたが、その間に機械学習とかGPUとかソフトもハ
ードも変わり、ついにディープランニング対応の生成AIが出現しました。
まだ、回答精度やデータの真偽など諸問題はありますが、ChatGPTもVersion4.0
からは随分と信頼性や処理速度が大きく改善され、皆さんもご存じの通りオープ
ンAIに負けじと、GoogleやMetaなども新製品発表をしています。
特にMicrosoft(以降、MSと略称)はオープンAIへ以前から投資や提携を行っ
ており、両社の関係は他社よりも強く、MSはOSや365などインフラソフト
と多くの利用する顧客を持っているので、データの機密面でも有利だと思います。
そして、オープンAIからはGPT4oが発表され、直ぐにGoogleからGeminiが
発表されました。僅か3、4年前にはメタバースが大きな注目を集めたばかりで
すが、メタバースの注目度もChatGPTが世に出てから、急激に話題性が下がった
と感じます・・・
今や世界の注目はChatGPTの勢いを中心に向けられており、どこまで成長するか
大きな注目を集めていると感じます。
それを象徴するかのようにChatGPTの初期発表後は、たったの2ケ月間で1億人
が使ったと言われていおり、もう、すさまじい注目度です。
何かこうアメリカの底力というものをまじまじと感じてしまいます・・・
重ねて言いますが、生成AI出現は黒船到来の出来事と同じです。
黒船と異なるのは全世界へ対する黒船だと言う点です。
想定以上の出来事だと言えます。
これから先の製品も気になりますが、シンギュラリティだのAGIなど人間とAI
にとっての話題は事欠きませんが、その一つにIT技術者の仕事が減るのではな
いかと危惧もあります。
例えば「士」が付く職業は無くなるとか、プログラマーも要らなくなるとか言わ
れていますが、恐らく、かなりの仕事が省力化、生産性アップ、高品質化、文書
削減などへ向かっていくでしょう。
こうなると、ヘンリー・フォードが大量に車を生み出したことと同じく、大量に
生成AI製品も世に送り出されることになります。生成AIを使いこなすまでは
時間も経験も必要でしょうが、そんな時間は思った以上に早く通過していく気が
します。また、マルチモーダル化の進歩も凄まじく、私達が考えている以上に流
暢さとスピード化も進むと思います。また、ボディシェアリングなども随分と進
化するのは間違いありません。
もし、AIと人間の脳が同調出来るようになれば、人間との関係も新たな世界を
迎えるだろうと期待します。日本人は人間型ロボットが好きで、例えば鉄腕アト
ムなど愛される存在です。このアニメの主人公もあながち夢ではなくなくかも知
れません。
これからの生成AIの進化はどこまで何が進むか予想も出来ません。
GPT4oでも本当に凄いですが、技術的にはGoogleのJeminiも優れており、進歩
自体が競争です。今は知名度ではオープンAIがリードしていますが、MSとの
提携も大きなメリットがあります。
GPT4oのデモを見ていると、AIがまるで人間のように感じます。間違いを指摘
すれば素直に謝ってくれますし、言葉遣いも丁寧です。一回位は怒らせてみたい
と思って試したことがありますが、やはり丁寧でした。相手がAIだとこんな魂
胆は無駄です。人間の方が謝るのは難しいかも知れません。
最後に、社会やIT業界への変化ですが、間違いなく押し寄せて来ます。
現に、開発技術者自身が生成AIを使って実感していることです。生産性と品質
に驚いています。馬車の時代に蒸気機関車や自動車が出現した事と同じです。
生成AIはそれ以上の衝撃になるかも知れません。まず、人手を中心にした業務
は激減する可能性が高いです。徒歩➡馬➡蒸気機関車➡車➡飛行機と同じで、労
力➡AIを使いこなす➡AIとの共存➡AIとの共生になると思います。
歩くより馬の方が早くて便利だったように、今は馬よりも車や飛行機の方が便利
です。やがて生成AIの活用もそうなります。
それでも敢えてAIに対する危険性もあるかと思います。それは使う側の人間の
問題です。技術は進んでも人間は必ずマイナス面も引き起こします。原子力平和
利用と原爆や水爆の圧倒的破壊力と同じことです。一度使い始めた以上、良いこ
とに使えば良いのですが必ず人間はそうではなくなります・・・哀しいかな。
良き事を実行し続ければ良き事を成し、悪しきことを行えば悪しき社会になりま
す。その影響の大きさも個人から世界的規模へと変わっていきます。
人間の英知と破滅は紙一重です。もう、後戻りは出来ません。世に出た以上、進
歩は止まりません。原子力などその典型です。AI時代には人間自身も成長しな
ければ、その反対の使い方も出て来ます。
生成」AIも徐々にその段階がやって来そうに思います。鉄腕アトムを作り出す
のか、それともAIドローン兵器を作り出すのかの選択を、特に国の指導者は考
えて自戒すべきです。進化と破滅の境目も次第に訪れそうな気がします。
この問題は人間にしか回答が出来ない問題です。生成AIがどれだけ成長しても
最後は人間の判断が求められます。ここが人間の最後の英知だろうと思います。
結局、人間に対する問いに答えられていないのが今の世界だろうと感じます・・
子供達の未来を奪ってはいけないことだけは確かです。
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