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vol.105 – 「オンライン融資」

新興フィンテック企業勢がAIなどの先端技術を駆使し、メガバンクの事業領域に攻め込んでいます。

その代表例が「オンライン融資」です。

今年はメガバンクの参入も相次ぎ[「オンライン融資」元年]の様相を呈しています。

他にも、”決済”・”送金”分野でもフィンテック企業が金融業態への”風穴”を開けており、サービス競争原理が働くため、資金の借り手など金融消費者の”利便性”は高まり恩恵が受けられると考えられます。

融資の違い

とくに中小企業は必要な時に手軽に小口融資を申し込みたいニーズがあり、「オンライン融資」が既存の金融機関との溝を埋めてくれるのではないかという期待があります。

ネットで手続きが済む「オンライン融資」は口座の入出金情報などを分析し、財務諸表だけでは見えない”商流”や”事業の将来性”から”金利”や”融資条件”を算出します。

先行する米国では年間の融資総額が4兆円を超えるとされ、日本では近年ようやくその取り組みが立ち上がってきました。

「オンライン融資」事業の仕組

中小企業から提示された決算書に基づき、会計ソフトを持つフィンテック企業のAIが3カ月先の”融資残高”と”資金繰り”を予測します。

事前に”借入可能額”や”金利”などの条件を試算することで、”融資残高”の[上限]と[下限]ラインを設定します。

その上で提携するクレジットカード会社へ無担保での資金融資を依頼します。クレジットカード会社へ書類を郵送すると約10日で中小企業の口座に着金します。

フィンテック企業は金利の一部を手数料として取ることで事業が成り立ちます。

中小企業の顧客基盤を持つ会計ソフト企業は、続々と「オンライン融資」に参入しているという訳です。

「オンライン融資」以前にあった課題

こうしたフィンテック企業の動きは小口融資の審査のあり方を揺るがすことになります。

銀行の従来の対面審査は、財務諸表にない”定性情報”を銀行員が経営者から聞き取り調査分析します。

中小企業にとって書類手続きが煩雑で面談後も実際に審査が通るかは分からないという課題がありました。

銀行界は2000年代半ばから”損益計算書”や”貸借対照表”など財務諸表に基づく「スコアリングモデル」に取り組みましたが、”粉飾”や”虚偽”データを使う申請を排除できず貸し倒れが相次いだ経緯がありました。

オンライン融資の参入一覧

「オンライン融資」の効果と今後の動き

会計ソフトを活用することで、複数の金融機関口座やクレジットカード会社などとシステムを連携し、”企業間決済”や”財務関連情報”といったデータをリアルタイムで分析することができます。

借り手の日々の”入出金”や”発注元”まで幅広く捕捉し、企業の”信用度”を多面的に評価できるのが強みとなります。

メガバンクも「オンライン融資」に動き出しました。

みずほ銀行は2019年5月、中小企業向けに始めています。融資上限は1千万円で貸付期間は最長1年となります。最短で2営業日後には資金が振り込まれる仕組みです。

3年で1万社、残高300億円を目標にしており、当面の貸倒率は3%以下にしたい考えです。

2019年6月24日に「オンライン融資」サービスを始めた三菱UFJ銀行はグループのフィンテック企業の技術などを生かし、自社が持つ約10万の法人口座のデータをもとにAIが信用リスクなどを分析します。

中小企業の会員サイト向けに最大300万円の融資を最短2営業日で実行できるとしています。

「オンライン融資」は2008年のリーマン・ショックで、銀行が中小企業向け融資を絞った(貸し渋り・貸し剥し)のを契機に米国で広がりました。

米銀大手JPモルガン・チェースと提携する米オンデックの融資総額はサービス開始から約11年で100億ドル(約1兆700億円)を超えました。

米国の市場規模はすでに2017年時点で428億ドルに達しており2013年と比べ10倍拡大しています。

現時点では、日本の「オンライン融資」は、年間高々400億円規模と試算されます。今後、さらに短期で融資ができるよう、フィンテック企業側は技術的改善を継続し、市場は急拡大するでしょう。

一方で融資対象企業の範囲や規模が拡大すれば想定外の貸し倒れ増加といったリスクがあり、どれだけAIの学習精度を高めていくか工夫が問われます。

このように、AIなどの新技術を適用するには、一定以上の既存顧客基盤・利用できるデータ資産・提携先の囲い込みといった諸条件の整備が必要であり、これらの諸条件クリアが新規事業の”成否”を分けるということになります。

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