• 株式会社ビジョンクリエイト

vol.112 – 「ショピファイ」

注目を高める「ショピファイ」

 新興ネット通販向けの電子商取引(EC)プラットフォームを手掛けるカナダの「ショピファイ」が、米アマゾンの隠れた競合として注目を高めている。ウェブサイト作成から商品在庫管理や”決済”・”配送”までを独自システムで効率化し、定額課金(サブスクリプション)を通じて提供している。導入企業はすでに100万社を超えており、時価総額も5年で約28倍に増えた。アマゾンを介さずネットでモノを売りたい企業が、ショピファイに頼る構図が米国などで生まれている。

 ニューヨークを拠点に小さな衣料品店を切り盛りするある男性経営者はネット通販のシステムをショピファイに「丸投げ」している。従業員が50人にも満たないためネットに人を割く余裕がない。「配送も自動化してくれるので助かる」と男性は満足げだ。従業員は仕入れや販促の仕事に注力しているという。


「ショピファイ」の沿革

 ショピファイの創業は2004年に遡る。創業者兼最高経営責任者(CEO)のトビアス・リュトケ氏は当時、友人とスノーボード用品を販売する通販サイトを立ち上げようとしていたが、手軽に始める方法が見つからなかった。人目をひくようなウェブサイト作りだけでなく、決済や配送も特別なノウハウが必要で小さな企業が全てを単独でやるのは難しい。この時の苦労が「ショピファイを設立するきっかけになった」(リュトケ氏)という。手掛けるのは単なるサイト作成ではない。提携企業を通じて商品決済や在庫管理から物流までを手掛けており、ネット小売りに必要な大半の業務を網羅している。

 月額29ドル(約3190円)からサブスクの形で利用でき、約2,000の専用アプリを自由に組み合わせることで、ITの技術者がいなくてもコストを抑えてネット通販サイトを運営できる。例えばネット小売りに欠かせない決済システムの場合、クレジットカードや銀行振り込みのほか、米決済サービス大手のペイパル、米アップルの電子決済サービス「アップルペイ」などから顧客が好きな方法を選べる。煩雑な在庫管理・売上管理も効率化が可能だ。ネット直販企業はフェイスブックや写真共有サイトのピンタレストなどを使って複数の販路で商品を掲載していることが多い。ショピファイでは販路が多岐にわたっていても商品の在庫や売り上げを一元管理できるようにした。EC機能の付いていない既存サイトやスマートフォンのアプリに「購入ボタン」を後付けすることもできる。


「ショピファイ」と「アマゾン」の違い

 企業向けのネット販売支援はアマゾンも「マーケットプレイス」の名前で提供している。ただ、ユーザはアマゾンのサイトに直接出品するため、どのような顧客が商品を買ったかを詳しく追跡できなかった。ショピファイは「小売企業が直接ブランドの表現方法を決め、顧客データを管理し、価格を設定できる」(同社ジェフ・ワイザー氏)。ユーザ企業数は世界175カ国以上、100万社を突破した。ユーザ企業の売上高は2018年に前年比59%増と、世界のネット通販平均の伸び率(21%)の2倍以上となった。新興ネット企業だけでなく、グローバル展開する米プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)やオーストリア飲料大手のレッドブルも利用企業に名を連ねる。日本では例えばゴーゴーカレーグループ(東京・千代田)が活用している。

 「ダイレクト・ツー・コンシューマー(D2C)」と呼ばれるネット直販に特化した新興企業群が増えるとともに、市場の評価も高まった。時価総額は足元で約540億ドルと、2015年のニューヨーク証券取引所上場からおよそ5年で約28倍に跳ね上がった。ネット通販の「王者」であるアマゾンの約9,380億ドルにはまだ遠く及ばないが、すでに米ECサイト大手のイーベイ(291億ドル)を抜き、ネット小売り関連を主力とする北米発の企業では2位の座につけた。ペンシルベニア大ウォートン校のマーシャル・フィッシャー教授は「サービスに潜在需要があり料金も適切なため顧客数が伸びている」と話す。米国ではナイキがアマゾン経由での販売を取りやめるなど、自前のネット販売を志向する企業が増えつつある。クレディ・スイスのブラッド・ゼルニック氏らはこうした企業の黒子としてショピファイが「やがてはアマゾンと競合する存在になる」と断言する。


 成長期待が高まるショピファイだが、国際事業の展開と物流網の拡大は道半ばだ。同社の利用者は世界に広がり、2017年には日本にも進出した。だが、まだ知名度は低く、日本独自の商習慣や決済方法への対応は十分に進んでいない。ショピファイの2019年7~9月期の売上高は前年同期比45%増の3億9000万ドルとなった。地域別内訳は公表していないが、収益の大半は北米とみられる。

 自前の物流網整備にも乗り出したばかりである。現在は米国内の配送・倉庫業者と提携して利用者とのマッチングを行うが、自社配送までは手を付けていない。翌日配送を可能にするような「アマゾンの巨大物流網は簡単にはまねできない」(フィッシャー教授)。同社は収益の大部分を研究開発など先行投資に回している。2019年7~9月期の最終損益も7,278万ドルの赤字だ。規模の拡大を続けながら先行投資に優先的に資金を回す経営手法は数年前のアマゾンも同じ。ワイザーCMOは「自分で即座に直販ビジネスを始め、顧客の反応を知ることができる。スピードが肝心だ。小売大手が自分で問題解決するよりも、ショピファイを使ったほうが早い」と話す。投資を成長モデルへとつなげてより多くのユーザ企業を引き寄せることができるか。底堅い競争力づくりが課題だ。

 このように日本でもアマゾン・楽天から卒業したい企業向けに同様の仕組みを考え起業することができると考える。後発の優位性を活かして、スキマをつくサービス提供者が日本からなかなか登場しないのはなぜか分析し、新事業展開を試みてはどうだろう。