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  • 執筆者の写真株式会社ビジョンクリエイト

vol.120 – 「デジタル庁構想」

菅義偉首相が唱える「デジタル庁」の創設が話題となっています。

目前の課題を突破口に、縦割り行政の打破につなげる菅流改革の象徴となる見込みです。

平井卓也デジタル改革相は「医療・教育・災害発生時の対応はデジタル庁設置前にプロジェクトを始めたい」と記者団に語りました。

政府は来年にも個人のマイナンバーと預貯金口座を連動させる計画です。

個人向けの給付手続きなどをマイナンバーカードだけでできるようにする方針となる模様です。

しかし、個人情報保護観点から義務付けはせず利用者の選択制にする見通しです。

デジタル政策

地域によっては申請から1カ月以上かかった10万円の現金給付手続き、

検査後2~3日たっても全体像が把握できないPCR検査結果の集約……官房長官だった菅氏は

「なぜこんな当たり前のことができないのか」

と何度も嘆きました。

新型コロナ感染拡大はデジタル行政の不備を白日の下にさらしました。

政府がIT基本法を施行したのは2001年であり、世界最先端IT国家を目指してから20年近く経過しています。

しかし、電子政府の進み具合を示す国連のランキングで日本は14位にとどまっています。

政府系システムは各省庁がバラバラに発注し、仕様・書式の異なるシステムが乱立しています。

これまで年間1兆円前後にのぼる政府デジタル関連予算のうち5千億円近くが既存システム維持・更新に消えたとされます。

役所内のシステム構築を特定のIT企業に過度に依存してきたため乗り換えは困難です。

公共現況は「ベンダロックイン」のワナから抜け出せない状態と言えます。

デジタル化の前提となる基礎データ整備も諸外国より圧倒的に劣ります。

国民の住所記録は原則、各自治体が管理しており、政府が一元的に把握していません。

官僚にとって業務デジタル化は政策立案などに比べ優先度の低い仕事になっていました。

個人情報漏洩などのリスクがある一方、やらなくても平時は問題にならなかったからです。

人工知能(AI)開発は文部科学省や経済産業省など、サイバーセキュリティは内閣官房・経産省・総務省が管轄し横の連携がありません。

2020年度本予算に占めるデジタル関連予算は1.2兆円もあったのに、省ごとの縦割りで分野別に細かく割り振り、官民がこぞって重複投資を放置してきました。

コロナ渦の状況下でも一部IT企業の堅調ぶりはこうしたムダの恩恵によるものといっても過言ではありません。

菅首相はデジタル庁のイメージを「複数の省庁に分かれている関連政策を取りまとめ、強力に進める体制」と説明しました。

関連施策の司令塔にとどまらず予算の配分方法にまでメスを入れられるでしょうか。

「役所の縦割り・既得権益・悪しき前例主義を打破する」・・・首相は自民党総裁選の論戦を通じてデジタル庁創設を繰り返し唱え、官僚の抵抗に先手を打ちました。

前例に縛られた霞が関発想の延長線上に大胆な統治機構改革の青写真は描けません。

首相はデジタル庁について「官民問わず能力が高い人材が集まって社会全体のデジタル化をリードする組織にする必要がある」と語りました。

「そのための検討を加速し年末には基本方針を定め、次の通常国会に必要な法案を提出したい」と発言しました。

会議後、平井氏は月内にも設置準備室を立ち上げると記者団に明らかにしています。

内閣官房・総務省・経済産業省など関係省庁から40~50人規模を集め、デジタル庁設置時期について「来年中には設立しないといけない」と強調しました。

デジタル庁には各省庁にある関連組織を一元化し強力な司令塔機能を持たせる計画です。

新型コロナ禍で露呈した行政手続きの遅さや連携不足に対応していくのは喫緊の課題でしょう。

各省庁システムの一括調達を進めてデータ様式を統一していくところから着手するようです。

省庁間だけでなく地方自治体や行政機関の間でも円滑にデータをやりとりし、行政手続き全般が迅速になるでしょう。

デジタル庁の法整備を巡っては、内閣府設置法を改正して設置する案が有力と見られます。

強い権限をもつ司令塔として機能させるために他省庁との横並びを避け、首相直轄組織にする新法制定も検討されます。

首相は政府のIT政策全体の基本方針を示すIT基本法も全面改正する予定です。

政府IT戦略のトップである内閣情報通信政策監(政府CIO)の立場を強化していくようです。

デジタル庁構想

これまで普及がなかなか進展しなかった「マイナンバーカード」もいよいよ「健康保険証」や「運転免許証」など個人識別する規格統合は必至となりました。

スマホだけ、カード1枚だけで行政手続きが済むよう改善する「デジタル庁構想」戦略の実現はIT業界にとって大きな事業機会となります。

IT企業大手は、「DXに対応する人材の確保・育成」に注力しており、高度IT人材を擁する企業が勝者になることは間違いありません。

これまでも書いたように、

ハンコ・印鑑・紙・FAX・郵送・宅配・・・

新聞や広告・チラシ・・・

満員電車での通勤・薬をもらいにいくだけの通院・・・

いろんなものが見直されるでしょう。

先日も分厚い封筒で送られてきて、OCRシートに鉛筆でマークする国勢調査(結局はネットで完結して全部廃棄しましたが)・・・これはいったい何だろうと考えさせられました。

便利な都会に住み続けるか、田舎で暮らすか・・・

みなさんもこれを契機とし、これまでそんなもん当たり前と思い込んでいたことが、実は幻想に過ぎなかった・・・

そんなことが周囲にないか振り返ってみませんか。

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