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  • 執筆者の写真株式会社ビジョンクリエイト

vol.121 – 「マイナンバーの逆襲」

マイナンバーカードは自治体に申請すれば無料で交付されるカードでした。

2016年に始まったマイナンバー制度にあわせ本人を認証するために導入されました。

マイナンバーは日本で住民票を持つ人全員に割り振られる12桁の番号で、社会保障や税の分野で関係機関同士がやりとりする際に個人を特定するために使うものです。

マイナンバーカード

マイナカードは身分証明書として使え、表面に顔写真がついています。

裏面にICチップを搭載し、読み取り機にかざすと本人認証ができます。

しかし、2020年9月時点普及率は全国で2割弱にとどまるものでした。

政府は2022年度末までに、ほとんどの住民がマイナカードを保有する目標を掲げ、普及率を上げるため、マイナカードを健康保険証や運転免許証の代わりに使う方向が明らかになりました。

政府は2021年にも個人のマイナンバーと預貯金口座を連動させる方針です。

10万円の現金給付に時間がかかりすぎ批判を受けて、マイナンバーと口座番号を連動させる法整備を急ぐ模様です。

大規模な災害が発生し預金通帳やキャッシュカードを紛失した場合でも、迅速に本人がお金を引き出せるようになる見込みです。

「健康保険証」はどうなるか・・・

2021年3月以降の病院では従来通りの保険証による有人受付に加えて、マイナカードを読み込ませての顔認証もしくは4ケタの暗証番号入力による機械での受け付けが可能になるでしょう。

面倒だった月替わりごとの保険証確認も不要となる見通しです。

健康保証

さらに重要なのが医療データ共有です。

マイナカードによる本人確認と同時に「情報閲覧同意有無」を聞かれるようになります。

同意をすればまず健康診断データから始まって、今後段階的に過去に処方された投薬情報や手術歴などを医師が閲覧できるようになります。

今まで患者の記憶に頼って確認していた問診時間が大幅に削減できるでしょう。

これまでマイナカードを保有することの利点は住民票などを役所窓口でなくコンビニで取れるようになり100円程度の節約につながる程度のものでした。

これでは消費者がマイナカードを積極的につくる行動を起こせません。

2020年9月から始まったマイナポイントはその点、5,000円という実利を謳い、マイナカード発行枚数が急速に増加しています。

さらにマイナカードが健康保険証代わりになる「マイナ保険証」の場合、実利はこれまでの100円、1,000円単位に比べてケタ違いの万円単位になる可能性があります。

「運転免許証」はどうなるか・・・

マイナカードと運転免許証を一体にすると、行政のテジタル化はさらに加速されるでしょう。

免許証の住所変更・更新時の講習はオンラインで完結する仕組みに変わります。

運転免許証の保有者は全国で8,000万人に上るため、2割にとどまるマイナカードの普及率は加速度的に高まる見込みです。

マイナンバーカードと運転免許証

しかし、警察庁は実際に免許証とマイナカードを完全に一体にできるのは2026年からとみている模様です。

住所変更した際もオンラインで申請すれば済むため、警察署に出向いて届け出る必要はなくなります。

免許更新のために求められる講習もオンラインで受けられるようになり、最寄りの免許更新センターに行くことも不要になります。

実現すれば免許保有者の行政手続きは大幅に簡素化されることは間違いありませんが、どうしてそんなに期間がかかるのでしょうか。

統合後は警察の業務も変わります。

交通違反者の免許証確認は、マイナカードのICチップに読み取り端末をかざして行います。免許の種類・番号・有効期限などの情報が表示されます。

国際免許を取得して海外で車を運転する際には日本の免許証も携行する必要があるため、免許証を完全に廃止することはできません。

ただ、海外での運転を希望する人は一部に限られるため、政府はほとんどの免許証がマイナカードに置き換わると想定しています。

警察が免許以外の情報は参照できないよう制限し、個人情報が警察に見られるのではないかという懸念が生じないように配慮するようです。

「本人確認の制度設計」はどうなるか・・・

デジタル技術がどんなに発達しても、デジタルサービスの利用者が間違いなく本人なのかを確認する過程は欠かせません。

政府が主張するようにマイナカードの電子署名・電子証明書を使ったオンライン申請が最もセキュリティが高いという点には産官学共異論がないようです。

新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐためにもオンラインでの行政手続き整備は急務であり、行政サービスのデジタル化は急務です。

望ましい本人確認レベルとは何かを、利用シーンでどんなリスクがあるか考え、既存制度を見直す議論は避けられません。

こうして、ようやく具体的な利便性が見え始めたマイナンバーですが、今後情報管理に対する関心も一段と高まるでしょう。

マイナンバーの利用は法律で厳しく規定されており、現在の使用分野は税・社会保障・災害対策に限られています。

「それぞれの情報は分散管理されており健康保険証との一体化を機に医療データが流出する心配はない」と政府は説明していますが、自分の医療データ保護に関する国民の関心は高いはずです。

マイナンバー制度とそのセキュリティのあり方に関して高齢者にも分かりやすく説明し理解を得る努力が欠かせません。

逆に、利点となるはずのことが実現に5年以上もかかると言われると、そんなスピード感で今そこにある危機を乗り切れるのか・・・と国民から不満の声が上がると考えます。

先端IT分野やデジタル化において、日本がいかに遅れているかということがよく分かります。

産官学が一致団結して、この取組をより前倒しにし、早期実現を図るべきだと考えます。

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