IT業界はブラック業界?
「IT業界はブラックだ。」
就活生の間でこの言葉をいまだによく聞きます。 大手IT企業に勤める社員だけでなく、ライン職・管理者も確かに過酷勤務者が多く、ブラックだと思う一面もあります。 しかし、AI(人工知能)やIoTなどIT業界はいま”空前の活況”にあり、IT人材不足が深刻化すると共に、働き方改革が徐々に浸透しつつあり、就活生にも人気の高い業界となっています。
そこで本当にIT業界はブラックなのか?その実体を解説したいと思います。
ブラック企業で一般的によく言われることは以下のようなことです。
(1) 深夜勤務・徹夜が何日も続くことがある。(もうすぐ本番稼働がある・・・とかで)
(2) 業務に必要な経費が認められず自腹で払わされる。
(3) 過酷勤務・過重労働によって退職者が多い。(社員の入れ替わりが激しい)
このように劣悪な環境で働かざるを得ないような会社もあるようです。
深夜勤務や徹夜が毎日続く・・・そんなことが実際に可能なんでしょうか。 一日でも徹夜したら、翌日は一日中寝ていないと無理があり、そのような勤務実態を継続していると、精神的に参ってしまうことになります。
業務に必要な経費が認められず自腹で払わされるという会社であればさっさとやめたほうがいいでしょう。 退職者が多いという実態はまだ多いようです。しかし、社員を道具として扱って使い捨てるような会社に未来はありません。
ただ、どこの業界であろうが、すべての会社が一律どうこうというわけではなく、良い会社もあればブラックな会社も必ず存在します。 昨今、IT業界が他業界に比べてブラック企業が多いかというとそんなことはないと思います。
IT業界はITゼネコンといわれるように、顧客からの発注を直接受ける一次請け企業(主に大企業)から二次、三次と下請けが存在するピラミッド構造になっているケースが多いです。
大企業は?
まず大企業(社員1,000人以上)から解説します。 大企業はコンプライアンス部門がきちんと機能していて、法令順守する傾向が強いので、ブラックということはまずないです。
大企業は顧客からの発注を一次請けとするため、主な仕事は顧客との交渉や仕様の調整、スケジュール管理などです。 そのため労働量を比較的自分で調整できる立場にあります。 当然繁忙期には残業が多い時期が続きますが、下流工程(内部設計~単体テスト工程)がメインで進行しているときは、 品質・進捗だけ管理していればよい期間もあったりします。
世の流れとして残業規制を厳密に行うようになってきたので、IT業界の大企業もこの流れに逆らうことなく労務管理はしっかりとされているようです。
中小企業は?
続いてIT業界の2次請け、3次請けとなる中小企業について考察します。 2次請け、3次請けでの主な仕事は、設計から製造、テスト、保守・運用などです。
これを顧客と一次請けが決めた予算や納期の中で進める必要がある為、自ら労働量を調整することが比較的難しくなります。 一昔前までは「デスマーチ」と呼ばれる大変なプロジェクトに入ると、過酷な勤務状態が続くこともあったようですが、現在においてはこのような状況は改善されてきたと感じています。
なぜかというと見積り手法が進化して、予期せぬ工数増加によって「デスマーチ」になるようなプロジェクトが減ってきたことや、 顧客側もITに対する理解が全体的に進み、手戻りが減少し、無茶な要求はしないようになったことがあげられます。
一昔前までは、顧客側もITに詳しい人が少なかったので「情報システムはきちんと動いて、ちゃんと使えて当たり前」なんていう人がかなりたくさんいました。 その頃は立場が上(発注側と受注側という超えられない壁がある)ということもあり、要求だけが過剰になり、金も出さないし、無茶ぶりはするしという顧客が多かったですが昨今は違います。 顧客側にも「IT部門」が存在するところが多くなりましたし、新卒採用としてIT技術者を採用する企業もたくさんあります。
それだけユーザ企業においても事業・業務とITを切り離して考えることがなく、 ITの重要性が高まってきたと言えます。 それに過剰な要求を出してプロジェクトを破綻させたりすると、実は発注側にとっても大変不幸なことになるということを何度も経験した結果、ITの特徴・特性を学習し理解されてきたようです。 IT業界(情報通信という業種・業態)というカテゴリが誕生してまだ歴史も浅いのですが、ITに対する適正なコストが認知され、浸透してきたということです。
「デスマーチ」となると受注側のIT企業は当然大変ですが、発注側もこのようなプロジェクトになるとコストも増加し、スケジュール遅延することで事業・業務に支障がでます。 顧客側の担当者も当然その「デスマーチ」に付き合うことになります。そのため”安かろう”、”悪かろう”の発注は回避するようになったということでしょう。 もちろんいまだに低コストを売りに仕事を受注し、社員を酷使することによって利益を得ているようなIT企業も存在しますが、それはどの業界でも同じことです。 一定数はそんな劣悪な企業も存在するのです。
IT業界はまだまだ成熟していないため、顧客の理解が進んでいない頃は、必要な予算・期間・工数が確保されず、結果デスマーチのようなプロジェクトが多かったと聞きますが、現在は過去の教訓を活かして、ずいぶん改善されたと言えるでしょう。 近年では「働き方改革」が謳われていて、勤務時間に対する規制も厳しいですから、「働きすぎて潰れる」ということはまずないので、IT業界を志望する人は心配しないでください。
IT業界はブラック業界ではない
労務面が全然ブラックではなくなってきたことは上記の通りです。そもそも、システムエンジニアの仕事は”コンピュータ”と”書類”と”人間”が相手ですから、 高いところに上る危険とか重い荷物を運ぶとか、そうした働き方はないわけです。
一方で、新技術が次々に登場するので、システム開発がより一層難しくなっていることは確かです。 逆にWebアプリケーション開発などでは様々な部品やフレームワークが整備されてきており、それらを利活用することで生産性を上げる仕組みもあります。 すると、業務の難易度は上がり、システムエンジニアに求められる知識も、サーバ関連などのIT技術は言うまでもなく、 自身が担当している”業界知識”・ ”業務知識”なども必要になるなど、より高度専門化されてきています。
さらにプロジェクトが大型化し、プロジェクト管理の難しさもより一層高くなっています。デスマーチプロジェクトは減ってきたと上述しましたが、その裏ではプロジェクトマネージャの苦労が多くなっているのです。 ただこういった難易度が上がった分、専門性が高くなっているということでもあります。システムエンジニアの需要は年々高くなっており、やっと給料などの処遇面でも他業界に引けをとらないまでに高まってきました。 今後、熟練かつ高度専門家したIT技術者は有利な就職・転職には困らないでしょう。
このように、IT企業に身を置く人たちから見ても、IT業界はまったくブラックではありません。確かに一昔前までは「デスマーチ」が横行して、新3K(きつい・帰れない・給料が安い)などと言われた時期もありましたが、現在はそんなことはありません。 技術は日進月歩し、それに追いつき、生涯学習し続ける姿勢が必要ですが、その分システムエンジニアの専門性が高まり、企業や世の中の需要・期待も高いのです。 このようにIT業界の未来は明るく、非常にやりがいがあり、大きな成長が見込めるホワイト業界と言えるのではないでしょうか。
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