• 株式会社ビジョンクリエイト

vol.94-サブスクリプション(継続購入)モデルについて

昨今は、NetFlixのように毎月定額で映画・ドラマ見放題動画配信や、Spotifyなど聴き放題音楽配信を利用する人が増えています。

“CD”・”DVD”をあえて購入するファンは少数となり、低価格レンタルや中古市場売買が市場を拡大してきましたが、そのビジネスモデルすら古くなりつつあります。

自動車も所有せず、カーシェアで済ませるトレンドが広がっています。特に最近の若者は所有への興味が乏しいと言われており、「所有から利用へ」の傾向が強まっているといわれています。

「ドリルを買う人が欲しいのは”穴”である」。

マーケティング関係者には周知のこの言葉をT・レビットが広めて半世紀になります。人は必ずしもモノ自体が欲しいわけではありません。自分の用事が片付くことを望んでおり、よりよい解決方法があればそれを選択します。

その方法として「所有よりも利用」を選ぶ傾向がこの10年で顕著になってきました。「所有よりも利用」という消費形態の変化に対応し、企業も「売り切り」から「つながり」重視に移行しています。

その結果、企業と消費者を「利用」で結びつけるサブスクリプション(継続購入)モデルが急拡大しているのです。

サブスクリプション

一般にサブスクリプションは定額制と認識されていますが、本来的な意味は、事業者と消費者が一定期間、契約関係にあり、その間に利用に対する料金の支払いがある状態を指します。

つまり、シェアリングサービスの代表であるライドシェアのウーバーテクノロジーズや民泊のエアビーアンドビー、フリマアプリのメルカリなども広い意味ではサブスクリプションに該当するといえます。

いずれも消費者が利用登録して継続的な購入意思を示しているからです。シェアリングサービスの多くはユーザーの利用量に応じて課金する従量制をとっています。

ユーザーは登録を済ませれば利用可能な状態になりますが、利用しなければ料金を支払う必要はありません。

これに対し、NetFlixやSpotifyなどは動画や音楽コンテンツを視聴し放題にして毎月一定額を課金する定額制をとっています。この方式の場合、ユーザーは登録後に全く利用しなくても料金を支払わなければならない一方、頻繁に利用する場合は1回あたり単価が低減するメリットがあります。

最近はこの定額制が消費者の人気を集め、急速に普及しています。その理由として、

  1. (1)販売価格が高くて購入には手が出なかったユーザーでも利用可能になる

  2. (2)分割払いで購入するケースと異なり、途中で不要と判断すればやめられる

  3. (3)ユーザーに一定の品質を保証しているので不具合があれば企業がすぐに対応する

  4. (4)ついつい使いすぎてしまうようなサービスの場合、支払い金額が青天井になるリスクを回避できる

―などが挙げられます。

定額制のサブスクリプションは、頻繁に利用したい消費者にとっては望ましく、他方、消費者のロイヤルティーを高めて継続的に利用してもらいたい企業にとっても適した方式です。

「所有から利用へ」の価値観と調和し、多くの消費者を引き付けるビジネスモデルになったのです。英ダイソンは2017年末からサブスクリプション型サービスを日本で試行しています。

このサービスを利用すれば、これまで高額で手が出なかった消費者も同社の高性能掃除機を月々1,000円からの負担で使えるようになります。ダイソンは掃除機を販売するメーカーから、優れた吸引力で部屋をきれいにするサービス提供企業へと変わろうとしているようです。

ビジネス応用

従来は利用するために購入するしかなかったものでも、購入せずに必要な分だけ利用できるようになってきています。定額制のサブスクリプションは企業とユーザーとの間に継続的な関係を作り出します。

これが企業に、下記三つのメリットをもたらします。

(1) 売り上げを”平準化”できます。

物販モデルでは販売時点で一括して売り上げが計上され、翌年以降の売り上げは立ちにくくなります。

例えばソフトウエアを売り切りで販売する場合、バージョンアップが3年後であれば、そのときまで同じ顧客による購入は期待できません。しかし定額制のサブスクリプションであれば、ユーザーとの契約が続く間は収入を確保できます。

(2) 安定収入により”事業リスク”を低減できます。

固定費が大きい企業は売上高の増減に伴って利益が変動するリスクに頭を悩ませますが、定額制であれば安定した収入を見込めます。月額定額制の場合、現時点の顧客数から翌月の収益(会員数×月額料金)を予測できます。

一定解約率を織り込めば、防衛的な見積もりができます。つまり、ユーザーを引き付けることができている間は将来収入を予測でき、固定費見合いで採算ラインを読むことが容易になります。

(3) 新規顧客にアプローチしやすくなります。

特に対象が高額なソフトウエアや電化製品など購入には手を出しにくい商品の場合に有効です。

こうした商品を定額制のサブスクリプションにすれば、毎回の支払額は少額になるため、それまで購入するのをためらっていた潜在顧客層にアプローチしやすくなります。

やり方次第ではユーザー数の大幅な拡大を期待できるでしょう。米アドビシステムズは2013年、数十万円するデザインソフトのパッケージ販売を廃止し、ネットを通じて登録会員に定額制で提供する方法に一本化しました。

これによってユーザー数は劇的に増えたものの、収益面では当初苦戦が続きました。

パッケージ販売に比べて年間のユーザー収益が数分の1に減少したからです。

同社が以前の利益水準をようやく回復できたのは2016年以降のことです。課金形態を定額にするだけでは潜在顧客の興味を引くのに十分とは言えません。

最近では月額3,000円でコーヒー飲み放題のカフェをはじめとして、月額3,000円で飲み放題の居酒屋、月額8,600円で毎日食べられるラーメン屋など、定額制を売りにする様々な飲食業者が登場しています。

しかし、これらがサブスクリプションとして顧客に新しい価値を提供することに成功しているかどうかは微妙です。月額8,600円のラーメンを提示されても、元を取るために月に12杯以上を同じ店で食べ続けたいという愛好者は限られるでしょう。

単品販売と同じ商品を定額制にしても、顧客は自身の利用頻度からみて有利な支払い方法を選択するだけになりがちです。顧客によほどのロイヤルティーや利用習慣があるものを除き、価値を明確に感じてもらえるサービスに仕立てる必要があります。

サブスクリプションモデルが拡大するのに伴い、企業にとっては顧客との関係を長期的に継続することが非常に重要になります。従来の物販モデルでは、販売(契約)時点でコストを回収できるので、その時点で企業から顧客への積極的な働きかけは一旦終わります。

一方、サブスクリプションでは契約以降に顧客との関係が始まります。顧客は契約を続けたくなければいつでもやめることが可能で、そうなれば企業は収入を失ってしまうため、継続して利用してもらえるように顧客に寄り添うことが不可欠になります。

多数の顧客に配慮し、継続して利用してもらうにはビッグデータや人工知能(AI)の活用が必須になります。

その好例がNetFlixです。

膨大な作品数やオリジナル作品の”質の高さ”が特徴ですが、レコメンド機能にも力を注いでいます。会員の視聴履歴をデータとして蓄積し、世界中の会員の視聴傾向と照らし合わせ、興味を持ちそうな作品を推奨します。

視聴回数が増えるほど推奨精度は上がり、会員の契約継続に威力を発揮するでしょう。「所有から利用へ」の価値観の変化に伴い、必要のないサービスは利用されずに淘汰されていきます。

あらゆる企業は顧客に対して価値を提供し続けられるかという”存在意義”が問われることになります。

ビジョンマガジンを最後までお読みいただきありがとうございました。これからも、皆様に有益な情報を発信していきますので、今後とも宜しくお願いいたします!