営業などの数値目標達成を最大価値とする”「ノルマ」至上主義”が転換点を迎えている。
長年、「ノルマ」達成を目指して働く猛烈社員が日本経済を支えてきた。 しかし、それによってさまざまな弊害が生まれてきたことも事実である。
最近は「ノルマ」撤廃を掲げる企業も出てきている。 営業職などでは、何らかの数値目標設定がなされることは業務の性質上当然とも言え、「ノルマ」設定がされること自体が問題とは限らない。 問題は、その「ノルマ」が適切なものかどうか、そうした「ノルマ」が適切に運用されているのかどうか、というものである。
当初は何とか達成できると思っていたとしても、実際に取り組んでみると、なかなか難しいことが分かってきた場合、その状況を早く上司に伝えるべきである。
数値目標設定過程で、社員の意思が反映され、合意しているような場合には、無責任のそしりを受けかねない。 かといって達成不可能が分かっていながら、結論がでるまで何ら対応策を講じなければ、あとで大問題が生じることになる。会社から与えられた「ノルマ」が達成不可能であれば、その時点でその旨を相談すればよい。 それに対して、会社や上司はどう判断するのか。できるところまでやってみろ、ということになるのか、目標を修正するのか、いずれにしても実際の状況を正しく伝えておくことが重要である。
数値目標修正を求めることは、自分の能力が足りないことを明言することでもあり、そうした申し入れは憚られるかもしれない。 やれば達成できる「ノルマ」なのか、頑張っても達成できないことが明白な「ノルマ」なのか、客観的に見極めることで、判断ができるだろう。 頑張っても達成できないことが明白な「ノルマ」を設定されたのであれば、会社が状況を把握していなかったのか、あるいは次のような意図があるのかもしれない。 すなわち、過剰な「ノルマ」に対して、未達成の場合に、退職勧奨を意図した執拗な叱責や暴言などが繰り返され、自主的な退職に追い込みたかったというようなケースである。
スルガ銀行に関する「不適切な行為に基づく融資が1兆円規模にのぼる」との報道によると、「ノルマ」に追われた行員らによるリスク軽視の融資が続いていた模様である。 静岡県外の多くの店舗で、新規融資「ノルマ」が1カ月ごとに設定され、達成度合いがボーナスや出世に響き、未達が続くときびしく叱られ、営業部門から外されることもあったという。
「ノルマ」と「目標」の違い]
(1) 「目標」は、「これを達成【したい】という前向きなゴール」であり、 「ノルマ」は、「これを達成【しないといけない】という強制」である。
(2) 「目標」は、「達成したときの喜び」に意識が向いているのに対し、 「ノルマ」は、「できなかったときの罰」に意識が向いている。
(3) 「目標」は、「これだけがんばって達成しよう」であり、 「ノルマ」は、「これだけは最低でも達成しろ」である。
銀行に限らず、ノルマを課された営業職の方々には大変気の毒なことで同情の余地がある。
社員に一方的に「ノルマ」を課すと、モチベーションは下がり、ときには”嘘”や”虚偽”の行動にはしるおそれがある。一方で実現可能な「目標」を持って適切にマネジメントすると、逆にやる気が出るはず。「ノルマ」はやらされ感があるのに対して、「目標」があって、その数字を目指すほうがやりがいはある」のは間違いない。
会社を船に例えるなら、社長は船長である。船長が「どこに行きたいのか」を船員に言わなければ、船員はどこに舵をきればいいか分からない。 「どこに行くかわからない」という不安は、かえってやる気を削ぐので、「目的」・「目標」は大切だと思う。しかし、いまどきはきびしい「ノルマ」を課し、社員を追い詰めるのは、ダメだろう。この機会に「ノルマ」を「目標」に変える経営管理を志向していってほしい。
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