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  • 執筆者の写真株式会社ビジョンクリエイト

vol.110 – 「”スマホ”決済」

 読者のみなさんはモノを売買し決済するときに現金を使いますか、それとも”スマホ”決済を利用する頻度が上がっているでしょうか?ご家族や友人・知人の消費行動とかどうなっているか観察してみませんか。”スマホ”は所有しているものの、現金やクレジットカード・本人確認できる証明書(運転免許証など)・公共交通機関用のICカードなどがはいった財布を持ち歩いている方もまだまだ多いと思います。

 先日、ヤフーを傘下に収めるZホールディングス(ZHD)とLINEが経営統合することで基本合意しました。両社の”スマホ”決済利用者は合計5,700万人となる模様です。通販や金融サービスと組み合わせるなど、他社を大きく引き離す巨大経済圏が生まれることになります。日本の”スマホ”決済は「1強」時代となるのか、競合の次の一手が出るのか、決済を巡る競争が決戦を迎えます。


 「日本の決済は現金が中心であり、”スマホ”決済比率はおそらく高々5%程度です、まだまだ伸ばさないといけません」。11月18日、東京都内で開かれた記者会見でZHDの川辺健太郎社長は語りました。LINEの出沢剛社長も「(統合は)”スマホ”決済で有意義な取り組みだ」と述べています。ZHDの傘下にヤフーとLINEが入る形で、2020年10月までに統合完了を目指し、ZHDは上場を続け、LINEは上場廃止となります。

 これで、ライバルを圧倒する”スマホ”決済のプラットフォームが生まれます。LINEペイの登録者数は3,700万人で、ヤフーなどが出資するPayPay(ペイペイ)は2,000万人です。両ブランドは当面併存しますが、決済店舗の相互利用・ブランド間の相互送金などを可能にする計画です。

スーパーアプリの登場

 両ブランドを単純合算すると約5700万人となり、NTTドコモの「d払い」(1000万人)や、KDDIの「auペイ」(700万人)を大きく引き離し、圧倒的優位に立つでしょう。“スマホ”決済を使える加盟店数も一気に広がります。ペイペイは国内の”スマホ”決済事業者との連携にとらわれない孤高の存在でした。ソフトバンクからの出向者などを含む営業人員は「数千人規模」に及び、170万箇所の加盟店を開拓してきました。ペイペイはLINEと重複する店舗もあるとはいえ、決済端末の設置台数が171万箇所に達するLINEペイと相互乗り入れできれば消費者の利便性が増すことでしょう。LINEアプリを使うヘビーユーザである10~20代の若者たちも取り込めます。  「スーパーアプリとして(金融とITを融合する)フィンテック領域に躍り出たい」。ZHDを傘下に持つソフトバンクの宮内謙社長は11月5日の決算会見で、ペイペイの今後の拡大に意気込みを述べました。「スーパーアプリ」は日常の会話から買い物まで生活に必要なあらゆるサービスを1つのアプリで提供できます。従来、EC・SNS・金融などサービスごとに提供企業が分散してきましたが、ZHDやソフトバンクの提供するサービスとLINEが集約されることで、国内初のスーパーアプリが生まれると予想されます。  スーパーアプリは既に中国や東南アジアでかなり普及しています。消費者の膨大なデータで個人の嗜好を分析し、次の商品やサービス開発にもつなげています。もっとも、ZHDとLINEは事業ごとに提携先が異なる問題もあります。顕著なのが銀行・証券分野です。ZHDはジャパンネット銀行を抱え、10月にはSBIホールディングスと金融事業で包括提携すると発表しました。LINEは野村ホールディングスと「LINE証券」を発足させ、みずほフィナンシャルグループとは2020年度に新銀行を開業する計画で、金融領域は「これから調整が必要になる」と考えます。  “スマホ”決済を巡っては利用者獲得に向けた還元キャンペーンを各社が打つなど、体力消耗戦の様相を呈しており、その先陣を切ったのがペイペイでした。2018年末の「100億円還元」など大規模なキャンペーンを打ち続け、一気に利用者を獲得しました。

2大陣営に集約の可能性

 他社も対抗措置として先行投資を断行した結果、足元の業績は軒並み落ち込んでいます。LINEは2019年1~9月期に339億円の連結最終赤字(前年同期は60億円の赤字)に陥いりました。「ばらまき型ではなく継続的にできるマーケティングを重視する」(出沢社長)と大型キャンペーンをせず、販促費を大幅に減らす方針を表明しています。決済サービス「メルペイ」を手掛けるメルカリも2019年7~9月期は71億円の連結最終赤字(前年同期は28億円の赤字)となりました。フリマアプリの売上金をそのままメルペイで使えるなど、クレジットカードがない若年層でも気軽に始めやすい点を訴求しているものの、収益改善への道のりは遠いようです。ヤフーが10月にペイペイと連携した「PayPayフリマ」を始めるなど、フリマアプリを巡る競争もさらに激化しています。  このような体力消耗戦のさなか、巨大陣営ができることで、”スマホ”決済を巡る企業の相関図に変化が出そうです。LINEペイはドコモの「d払い」とKDDIの「auペイ」、メルカリの「メルペイ」と加盟店開拓で連携するほか、決済分野で相互乗り入れしていました。LINEが携帯通信で競合のソフトバンク陣営に入ることで、ドコモとKDDIは提携を見直す可能性があります。KDDIは楽天ともサービスの加盟店網で連携しています。”スマホ”決済はソフトバンク陣営と、ドコモ・KDDI・楽天の2大陣営に集約される可能性もあると考えられます。

世界を見渡すとどうなるか・・・

 確かに、ヤフーとLINEの統合は巨大な経済圏を生み出すでしょう。ただ、あくまで日本経済に閉じた話です。


 世界では「GAFA」たちが軒並み決済事業に乗り出しています。アップルの決済「アップルペイ」は取引件数が米決済大手ペイパルを上回るなど存在感を高めています。中国ではアリババ集団の「アリペイ」が利用者数約12億人と現地で圧倒的な地位を占めます。アリババに出資する孫正義さんはアリババに触発され、今回の統合を後押ししたとみられます。ヤフー・LINE陣営は、SBGが出資するシンガポールの配車サービスであるグラブやインドの新興ホテル運営会社OYOなどと連携すれば、海外で存在感を示すことができるかもしれません。このように世界に目を転じれば、今回の統合は世界中を巻き込んだ新たな競争のスタートと言えるでしょう。

 上記の状況を踏まえ、みなさんがもし財布をお持ちなら、その中にどんなものが入っているか、どうしたら安全・安心かつ便利かを再考してみてはいかがでしょうか。また、身近に高齢の方がおられるなら、その方たちのことも考えてみましょう。もし、財布を紛失・置き忘れ・盗まれたりしたらどうなるか、また”スマホ”が突然使えなくなったらどうなるか、日頃から点検しておかないとリスクが大きくなります。日本の人口はまだ1億2千万人を超えています。上記の5,700万人は実は半分にも満たないという点、大変気になったのが今回の統合ニュースを受けた私の所感でした。

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