vol.162 -「AIブームの弊害? - メモリ高騰が引き起こすもの」
- 株式会社ビジョンクリエイト

- 2026年1月1日
- 読了時間: 6分
はじめに
あけましておめでとうございます。
2026年、令和8年の一年が始まります。本年も宜しくお願い申し上げます。
さて、年明け早々で恐縮ですが、今回は少々重たい話題を挙げます。
ご存知の方々もいらっしゃると思いますが、昨年末、メモリ不足&価格高騰の話題が報じられました。
その結果、PCを販売しているメーカーは値上げを示唆したり、パニック買いによる販売の一時停止など、様々な影響が出ています。
(以下、一例)
[メモリが深刻な品薄&高騰状態に]
[レノボとデルがPC値上げか AI需要でメモリ不足、15〜20%高騰も]
[パソコン製品の販売停止に関するお知らせ(マウスコンピューター様)]
様々な物価が値上がりしていますが、メモリについては、かつてないレベルで暴騰しているという事実があります。
わずか数ヶ月の間に価格が2倍、極端な例では5〜6倍以上に跳ね上がっています。
そして、この影響は、メモリ単体にとどまらず、これから発売されるノートパソコンやスマートフォン、さらには企業内の機材の購入や、環境構築等のコストにまで直撃します。
・なぜこんなことになってしまったのか?
・私たちの生活やIT開発の現場にどんな影を落とすのか?
・どう向き合っていくべきか?
今回はそれを記事にしてみたく思います。
なぜ価格がここまで上がるのか?
なぜ、こうも急激に価格が高騰しているのか、有力な原因はAI需要の増加、と言われています。
AIのデータセンターで使用される高性能なメモリ(HBM)の需要が高まり、メモリを製造している会社がそちらを優先させている事で、一般向けのメモリの供給量が減少しています。
HBMの利益率は、一般向けのメモリと比較して高く、50%を超えると言われていますので、企業としては優先させるのは当然の流れと言えます。
また、特に「生成AI」については、膨大なデータを学習し、推論を行いますが、この過程で使われる計算資源は、従来のシステムとは桁違いです。大規模なAIでは、1台のサーバーに数百GB~数TB単位のメモリを搭載することも珍しくありません。
こうした需要が、世界中のクラウド事業者やIT企業から一斉に発生した結果、メモリの争奪戦が起きています。
メモリは高度な製造技術が必要で、誰でも簡単に作れるものではありません。世界でも限られた数のメーカーしか生産できず、急激な増産が難しいのが現実です。
ここまでの需要増は流石に想定されておらず、供給体制が追い付いていない事も、価格の高騰の原因になっています。
私たちの生活への影響
メモリの価格上昇は、エンジニアやIT企業だけの問題ではありません。私たちの身近なところにも影響が及びます。
・PCやスマートフォンの価格上昇
冒頭で記しましたが、何社かのPCメーカーは値上げを示唆しています。
デルについては2025年12月中に法人向けで値上げを行っています。
スマートフォンについても、2026年以降に発売される機種は、従来比20%以上の
値上げが見込まれると言われています。
・ゲーム機の値上げの可能性
PlayStationやSwitch2などのゲーム機も、現時点では名言されていませんが、メモリを搭載しているので、値上げは避けれないと言われています。
・機器のスペックダウン
価格の高騰により、これまでは搭載できていた機能やスペックが、搭載できなくなってしまう様な事象が生じます。
・教育現場でのデジタル化の停滞
お子さんがいらっしゃる方には特に影響が大きいと思われます。
GIGAスクール構想などで配布、もしくは、購入された端末があると思いますが、端末に使える予算は限られています。
メモリの高騰により「低スペックな端末を買い直す」か「古い端末を無理やり使い続ける」といった事になり、それは教育の質に差が出ることになります。
・「贅沢品」化が進む
PCやスマートフォンなど、決して安い買い物ではありませんが、これまでハイスペックな予算で購入していたPCが、今後はミドルスペックのPCになる可能性が高いです。
開発現場での頭の痛い問題
アプリケーション開発を行っているエンジニアにとっても、この状況は頭の痛い問題です。
ハードウェアのコストがこれほど高騰すると、開発用にPCを購入したい、となった時に、これまでと同じ感覚で購入する事のハードルが上がります。
例えば、過去に購入していた開発用PCの価格が15万円だったとします。同じスペックの開発用PCを2026年に購入しようとした場合、15万円では購入できない、といったケースが生じます。
これが、1台や2台といった小数であれば、まだ影響は最小限で済むかもしれませんが、PCのリプレイスを計画していて、何十台、何百台、もしくはそれ以上の台数の購入を計画していた場合はコスト面でかなりの痛手になります。
また、クラウドサーバーの維持管理費も当然上がる事になります。
AWSやAzureなどのクラウドサービスも、基盤となるメモリが高くなれば、インスタンス(仮想サーバー)の料金を上げざるを得なくなります。
つまりは、毎日毎月の利用料金に影響してくる事になります。
どう対策していくか
予測になりますが、2026年から2027年にかけては非常に厳しい時と言えます。
「メモリ冬の時代」と言える期間をどう凌ぐか、これはエンジニアにとっても一般ユーザーにとっても非常に切実な課題です。
「今は耐え時」と割り切って、知恵を使って乗り切るのが一番の対策かもしれませんが、我々が現実的に取れるであろう対策を幾つかあげてみたく思います。
・最新のハードウェアを追わない
ハードウェアの価格が高騰している今は「いまの資産をいかに延命するか」が重要です。
新たに購入するのではなく、中古や型落ちのパーツを入手して増設するほうがコストパフォーマンスは圧倒的に高いです。
・メモリ使用の見直し
メモリが欲しい、となった場合でも、これだけ価格が高騰している状況下で気軽に購入するという訳にはいきません。
いまの利用状況は妥当なのかも含め、定量的に把握することが必要です。
本当に必要なのか、そうでないのか、無駄な確保を防ぐ事もできます。
・「購入しない」という選択肢を持つ
個人の消費行動も考え方をシフトする必要があります。
本当に必要なのか、そうでないのか。
必要でないのなら購入せず、いまある資産で凌ぐ、という手段を取るのも一つです。
もしどうしても必要であれば、「安くなるのを待つ」というよりも、中古や旧価格の在庫を今すぐ確保するのが賢明でしょう。
まとめ
今回のメモリの高騰は、単なる「部品価格の問題」ではなく、AI時代の構造的な課題を映し出したものと言えます。
AIの登場によって、便利になった事もありますが、その裏側を支えるインフラの重要性と脆さが浮き彫りになりました。
AIは便利なツールではありますが、魔法ではありません。限られた資源の上に成り立つ技術であることを、改めて意識する必要があります。
メモリの高騰がいつまで続くのかは不透明ですが、恐らく2026年~2027年の間は、この高いコストと付き合っていかなければならないでしょう。
もし、PCの買い替えを検討されているなら、「本当にそのスペックが必要か?」を自分に問い直す、良い機会なのかもしれません。
今回の記事が、AIブームの裏側を考えるきっかけになれば幸いです。
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