top of page

vol.153 -「SoC - 高性能・低消費電力化に向けて」

  • 執筆者の写真: 株式会社ビジョンクリエイト
    株式会社ビジョンクリエイト
  • 4月1日
  • 読了時間: 4分

はじめに


スマートフォンやPC、IoTデバイス、自動車など、SoCはあらゆるデバイスに組み込まれていて、私たちの生活や産業に大きな影響を与えています。

今回は、SoCに使われている技術がどのように進化しているのか、技術トレンドを交えながら記事をお届けしたく思います。


SoCとは?


SoC(System on a Chip)とは、CPUやメモリ、GPU、I/Oインターフェース、ネットワークモジュールなど、多様な機能を1つのチップに統合した半導体の事を指します。

SoCは高性能かつ省電力な設計が可能であり、多くの電子機器の中核を担っています。

SoC(System on a Chip)イメージ画像
SoC(System on a Chip)イメージ画像



高性能化のトレンド


1. チップレットの採用

従来のSoCは、1枚のシリコンダイにすべての機能を統合するモノリシック設計が主流でした。

しかし、最近では「チップレット」と呼ばれる、小型のチップを複数組み合わせる設計が増えています。

チップレット技術には以下のような利点があります。


・製造コストの低減

 大規模な単一チップの歩留まりを気にせず、小型チップを組み合わせて高性能を実現。


・柔軟なカスタマイズ

 用途に応じて最適なチップレットを選択可能。


・スケーラビリティの向上

 異なる製造プロセスで作られたチップを統合しやすい。


一例をあげると、AMDのCPU「Ryzen」プロセッサで採用されています。Intelも「Core Ultra」プロセッサからチップレットを採用しています。



2. 先進プロセスノードの導入

SoCを高性能化するには、トランジスタの微細化が欠かせなくなっています。

現在、TSMCやSamsungなどのファウンドリは、4nmプロセスや3nmプロセス、更に2nmプロセスの開発・量産を進めています。

プロセスノードが微細化される事で主に以下の様な特徴があります。


・トランジスタ密度の向上による演算能力の向上

 微細化される事で集積可能なトランジスタ数を増やす事ができ、集積度が高くなります。


・消費電力の低減

 動作速度が速くことで、結果的に必要な消費電力を少なくする事ができます。



3. AIアクセラレーションの強化

機械学習の需要増加に伴い、多くのSoCにはAI処理専用のアクセラレーター(NPU:Neural Processing Unit)が搭載されています。


これにより、カメラで撮影した画像などの画像処理や音声認識のパフォーマンス向上に寄与しています。



4. 3D積層技術(TSV, 3D IC)

SoCの高性能化と省電力化を両立するために、3D積層技術が注目されています。

3D積層とは、チップを上下に積み重ねる仕組みで、従来より速度と消費電力が改善できます。


AMDの3D V-Cache技術や、Samsung、TSMCのHPC向け3D IC技術などで導入されており、今後はスマートフォンやデータセンター向けのSoCにも広く導入されることが期待されます。



低消費電力化のトレンド


1. FinFETからGAAへ

FinFET(Fin Field Effect Transistor)は、電流を制御するゲートを3方向からトランジスタのチャネルを囲む構造を持ちます。この設計により、漏れ電流の低減と高い駆動能力を実現します。


FinFETは10年以上使用されてきましたが、微細化が進むにつれて、問題が見られるようになってきました。その解決策として登場したのがGAAです。


GAA(Gate-All-Around)は、FinFETをさらに発展させたもので、トランジスタのチャネル全体をゲートが囲む構造を持っています。これにより、電流の制御性が向上し、より低消費電力で高性能な半導体を実現できるようになります。


TSMCやSamsungなどのファウンドリでもGAAが採用され始めています。


2. 動的電圧・周波数スケーリング(DVFS)の進化

DVFS(Dynamic Voltage and Frequency Scaling)とは、負荷に応じてプロセッサの動作電圧やクロック周波数を調整する技術です。

最新のSoCでは、AIによる動的な電力管理が行われ、さらなる省電力化が実現されています。


先月のエンジニアブログで記事にしたARM(Cortex-A)に採用されています。



3. 低消費電力メモリ技術の導入

SoCが高性能になると、メモリアクセスによる消費電力が増加してしまう課題があります。

この課題に対処するために、消費電力を抑えつつ、高速な処理を実現するための新しい技術がでてきています。


・LPDDR(Low Power DDR)

 低電圧・低消費電力に特化したメモリの規格です。


・ReRAM(resistive random access memory)

 抵抗変化メモリといわれるもので、電圧を印加した時の電気抵抗が変化する現象を利用して、低消費電力を実現します。


・MRAM(Magnetoresistive Random Access Memory)

 磁気抵抗メモリといわれるもので、こちらは磁気を使って磁気の向きでデータを記録する技術です、省電力に優れているといわれています。



まとめ


今回記事に挙げたもの以外に、SoCには様々な技術が使われています。

SoCは今後も進化を続け、より高性能かつ省電力な製品が登場することになるでしょう。


それは、私たちの生活のあらゆる場面に影響を与える事になります。

SoCの進化は快適さや便利さ等に繋がります。


今後SoCがどのように進化していくのか、注目です。


最新記事

すべて表示
vol.155 -「進化するマルウェア - 巧妙化する手口」

はじめに 最近のニュースで話題になっていましたが、楽天やSBI等のネット証券会社で口座の乗っ取りが急増する被害が発生しています。 (参考URL) 証券口座乗っ取り、不正取引額3000億円超に被害拡大-金融庁 https://www.bloomberg.co.jp/news/...

 
 
vol.154 -「PCのスペック - ITエンジニアが提案するスペックの見方と選び方」

はじめに 過日、友人達と飲みに行った時の事ですが、友人のお子さんが大学に入学する事にノートPCを購入する必要があるそうで「どういったスペックのもの買えば良いのか?」、という話題になりました。 結論から申し上げると、アプリケーションを開発したりといった用途ではないらしく、そこ...

 
 
vol.152 - 「ARMとARMアーキテクチャ」

「ARM」って何? 皆さんは「ARM」という言葉をご存じでしょうか? ITエンジニアの方でも、組込系のエンジニアでなければ、あまり馴染みが無い言葉かもしれません。 「ARM」とは、イギリスのARM社(ARMホールディングス)が持っている、プロセッサ(CPU)の設計技術のこと...

 
 
 

Comments


bottom of page