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  • 執筆者の写真株式会社ビジョンクリエイト

信用と信頼 第82号

最近、有名企業で目立った不祥事が二種類あるように思います。 一つは個人情報流出問題であり、もう一つは製造年月日捏造問題です。 両者共、根絶することは難しい面もあるでしょうが、企業の信用や信頼という点から防止しなければならない重要なことだと思います。 最近だけでも、幾つかの実例が思い出されます。 ・地方老舗百貨店での誤った説明表示によるネット販売 ・老舗中に老舗である伊勢神宮近くの某社と類似会社の製造年月日捏造問題 ・業界最大手の英会話教室での解約金トラブルに端を発した倒産劇 ・複数保険会社の保険金不払い騒動 ・北海道の食肉会社での不正混入事件

企業は信用、信頼で成り立っていると云われていますが、今や死語になっているのでしょうか?・・・ 現代は「情報化社会」と云われる時代で、ちょっとした出来事が瞬く間に日本国中に伝わります。 その中に身を投じる私達にとっては他人事ではありません。 個人情報保護、機密情報保持、情報セキュリティ、・・・といった類のキーワードは、そんな時代であることを物語っています。 永年に渡って、社員や経営者が苦労して築き上げて来た信用や信頼が、たった一つの不祥事で顧客はもとより社会的信頼も失い、瞬く間に消滅しかねない厳しい社会であることは周知の通りです。 問題の本質は何なのかと改めて考えてみると、企業の目的といわれる「最も根幹的でピュアな精神的支柱」が倒壊しているのではないかということなのです。 つまり、費用対効果という集約された価値観のみが重要視され、善悪という目に見えにくい価値が疎かにされているのではないでしょうか?・・・ 果たして、先に挙げた企業などは老舗と言われ、何代かの経営者によって経営基盤の強化や事業拡大が図られてきたことは間違いないところです。 そこに至るまでには、多くの時間と大勢の人達の辛苦が礎になったのも間違いありません。 しかし、いつの間にか、企業の精神的支柱が色あせ、損得計算の営利的側面だけが際立って残ってしまったのではないでしょうか?・・・ それだけ今は厳しい社会なのだと云われる方もいますが、大袈裟な話、平安時代でも、鎌倉時代でも、戦国時代でも、江戸時代でも厳しさは同じだったと思います。

私自身、実は偉そうなことは何一つ言えない経営者です。 それでも私は、稲盛和夫氏が話されているように、究極の企業目的は利益ではないと考えています。 「利益=売上―経費」と算式からも分かるように「利益は結果」だと思うのです。 当社は前期に大赤字を出してしまいました。 偉そうなことを言える立場ではありませんが、それでも私はその考え方に共鳴します。 私自身は創業者であり株主であり、創業の目的は営利が最優先の企業作りではなく、自分の人生を賭けた「人を中心とした企業ビジョンの実現」なのです。 何を青臭いと云われる方もいらっしゃると思いますが、利益というものは、売上を最大に経費を最小にすることが重要であり、利益はその結果に過ぎないと思います。 よって前期のような業績は、必ず「売上」か「経費」のいずれかが、または両方に原因があります。 それでもやはり利益は、その結果だと思います。 利益から追求する経営姿勢は本来の姿ではないように思います。 しかし、利益は間違いなく必要不可欠のものです。 会社絵を存続させるだけでなく発展させて行く為に必要な経費だと思います。 利益確保という一面だけで一時的発展が出来たとしても、やはり、その影響は必ずどこかで襲って来ると思います。

借入は他人様のお金であり、自分のお金ではありません。 金利も付けば返済の限界もあります。 結局のところ、経営の舵取りが出来ていない証なのです。 また、経営には人間としての弱さが必ず結果として現れます。 よって経営者には、大きな勇気や行動が必要だと思います。 人の性格は変わらないと言われますが、変わらないのであれば注意して抑制することは出来ます。 自分を変えるのは自分しかいない、他人でなくて自分自身だということです。 相当に難しいことだとは思いますが、自分を変えることは見た目の言動ではなく見えない内面の変化を示すのではないでしょうか。

企業の失態を見るにつけ、自分はどうなんだ?と自分に向かって問うことがあります。 「自分は大丈夫だ」と云えるほど善悪と損得が明確に分かれている訳ではありませんが、それでも基軸の重要性は痛感しています。 結局のところ、企業は他人の集まりであり、その集まりを如何にまとめ、同一化した価値観に社員のベクトルを集中出来るかが重要だと思います。 大企業では多様化した価値観こそが大切だと云われる方もいますが、我々のような零細企業では「社員の魂が一つになる」ことが最も重要なことなのではないでしょうか。 これが出来ていないから、業績もそれに準拠してしまうのだと思います。

冒頭の企業例のように、事業規模や事業内容が大きくなれば、この「魂の共有化」が相当難しくなるのではないでしょうか? 一時流行しましたが、「大企業病」とはそんな状況を指すのではないでしょうか?・・・

信用と信頼、それは大きなダムの壁面に、一端、小さな傷や穴でも開いてしまうと、その巨大なダムがやがて突然、破壊に至ることと同義だと思うのです。 このことは言うのは簡単なのですが、行うは難しで、相当に難しいことだと思います。 精神的な指導だけではなく具体的な組織的な仕組みも必要です。 罪を憎んで人を憎まずとは、具体的な仕組みや組織や運用がなければ絵に描いた餅ではないでしょうか・・・ 当社は今、そんな次元の高いところに位置する企業ではありませんが、意識として高いモラルを持ち続けたいと願っています。 モラルという言葉が不適切ならば、これも死語になりつつありますが「志」という言葉がピッタリです。 志があれば困難や苦労も皆の力で乗り越えられます。 しかしそれがなくなると、個人的価値観に基づく目先の損得に走る行動になりやすいのではないでしょうか?・・・

当社はまだまだ何も出来ていない、何も揃っていない、何も自慢出来るものがありません。 しかし、これから作って行くことは出来ると信じ頑張ることは出来ます。 信用と信頼、一朝一夕には身につけることは出来ませんが、そんな言葉がお客様ではなく、社員や社内から出てくることを目指して、尚一層頑張りたいと思います。

私は人生は自分の描いた通りになると信じています。 描いて描いて、悩んで悩んで、苦しんで苦しんで、少しでも自分の描いた会社作りが出来るよう精進したいと思います。 何かの折に見つけた言葉を、手帳のページに張ってあり、それを時々は見つめ直して自問していることがあります。 「財を遺すは下、事業を遺すは中、人を遺すは上なり。されど、財をなさずんば事業保ち難く、事業なくんば人育ち難し」。 だから、企業経営は楽しいし、それ以上に苦しいことも多いように思います

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