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気になった出来事 第296号

  • 3 時間前
  • 読了時間: 5分

今回は日常での思いがけない出来事について書いてみたいと思います。

去る三月下旬の夕方の地下鉄車内での出来事です。乗車した車両の三人掛けシートに明ら

かに生活困窮者と思われる中年男性が一人座っていました。髪の毛はボサボサで長く伸び、

衣服は全体がかなり汚れていてあちこちが破れており、両足も膝下から丸見えで履いてい

る草履も汚ない様子でした。当人の年齢層も定かには分かりませんが、私の推定では40

代半ばではないかと感じました。車内の床にはゴミも散らかっており、その上異臭も強く、

多くの乗客が離れたシートへ座っていました。勿論、付近に立っている乗客もいません。


私が乗車した時にはその人の向かい側シートが空いていたので、咄嗟に座ったのですが、

異臭がきつく、服装も汚いし、直ぐに別のシートへ移りました。その後は本を読み始めた

のですが、その男性が気になり始めて横目で見たり、様子を窺ったりしました。私は勝手

にその人について推測を始めてしまいました・・

 何故、この人はこんな状態になったのだろうか?

 こうなる以前はどんな生活をしていたのだろうか?

 家族はいないのだろうか?

 心配している人もいないのだろうか?

 これから先はどうするのだろうか?

最後にはその人と私の違いは何なのだろうかと自分でも可笑しなことを考えていました。


人は生まれてからどうして生活困窮者へなっていくのかなど考えたことがありません。

何らかの事情があってそんな状況へ陥って行ったと思いますが、その時にどんな苦しみを

経験したのだろうか?と思い始めていました。次第に私自身が悲しくなり、誰もが生きて

いれば仕事や家庭のことで大きな変化や苦しみを経験する可能性もあると思いながら、き

っとそんな辛いことがその人にも起こったのだろうと思い始めていました。


やがて電車は私が降りる駅に近づいて来たので、降りる際に咄嗟にお金を取り出し、「食

事の足しにして下さい」とその人に声をかけて渡しました。その人は無言で受け取ってく

れました・・

私に出来たのはたったのこれだけでした。

この日の出来事が私の頭の中に残ってしまったのです。

「もっと違う何かが出来たのではないのか?」という思いや人を見た目や状況だけで判断

してはいけないという自分へ対する戒めのような気持ちが残ったのです・・

再会することはないでしょうが、どこかやるせない、切ない、悲しい想いが残りました。


この後にバスに乗りながら、ピアニストのフジコ・ヘミングさんを思い出していました。

彼女が海外で路上生活者に小銭を渡す動画の中で取材者にその理由を問われ、彼女はこう

言ったのです。「神様が私を見て試しているから」と。更に「大好きだったお母さんに天国

で会える人間かどうか、神様に試されている気がするのです」と・・

私はその事を自分に重ねて考えていました。自分も試されているのかなあと・・

私にとっては神様がいるとかいないとかは関係なく自分自身だけは間違いなく知っている

のです。その時の自分の心の奥底を知っているのです。私はそのように思います。周囲や人

のことは関係なく、自分自身が本当の自分を知っていると・・

その瞬間にその人の真の姿が現れるものです。永く生きていれば苦しい場面に出会います。

逃げたい、投げ出したい、助けてほしい、どうでにもなれと思ったりもします。しかし、

自分の本心に対しては自分で向き合うしか確認方法はありません。自問自答しながら踏ん張

り、あるがままを受け入れるしかありません。


私の机の引き出しに一冊の大切な本があります。韓国の友人が送ってくれた和訳本です。彼

はその本に書かれている体験と同じ体験をしたそうです。その結果生き方が大きく変わった

そうです。嘗てはもの凄いワーカーホリックで体調を崩したこともあります。今は仕事のや

り方を変え、国を越えたボランティア活動もやっています。世の中には目に見えず耳に聞こ

えないものでも信じる価値のあるものがあります。日本にはあらゆるものに神が宿るという

考え方があります。私も感謝と畏敬を忘れずに生きることは大切だと思っています。人の幸

せはお金で得られる部分もありますが、それでも幸せの本質はもっと別のところにあると思

います。今この瞬間にも社会の片隅で必死に生きている人達もいます。それも自らが選んだ

訳でもないのにです。


私は有難いことに今も働いています。住む家もあれば、食事もちゃんと食べています。それ

だけでも十分に有り難いことだと思っています。しかし、それでも「毎日幸せですか?」と

問われれば迷う自分がそこにはいます。ですから「はい、幸せです」と答えられる時間を1

分でも多く増やしていきたいと願っています。この地下鉄車内での出来事は今でも心残りが

あります・・もっと何か出来たのではないのかという悔いです。いきなり理想の善人にはな

れませんが、目の前で見かけた現実を忘れずに生きていくことは私も出来ます。生きるとは

少しでも自分を高めていくことだと改めて思った次第です。多くの人が幸せであって欲しい。

感謝。

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